山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師
山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師
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 日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「コロナのメンタルヘルスへの影響」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。

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 世界保健機関(WHO)が「コロナパンデミック」の宣言を終了し、日本でも新型コロナウイルス感染症が「感染した時の重篤化など危険性が高い感染症」から「一般的な感染症の一つ」へと変更されてから、1カ月が経とうとしています。「コロナはもう過去の疾患だ」と感じている方もいれば、「コロナはまだ身近な疾患の一つだから、感染対策を続けないといけない」と感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 私の場合、日本を離れてアメリカに長期滞在するようになった昨年末から、コロナはすでに過去のものであったかのように感じていました。というもの、日本では着用しない日はなかったマスクを全く着用しなくなり、ニュースでもコロナに関する報道をほとんど見ることがなくなってしまったからです。

 コロナパンデミックをきっかけに再発し、パンデミック宣言が終了した後にも1回起きてしまった「パニック発作」という観点から考えると、私の生活は元に戻ったとは言えなさそうです。

 症状が初めて出現したのは、大学2年生の後期だったと思います。一般教養が終わり、専門科目の授業が始まると、週に2回から3回実施される試験のための勉強に追われるようになりました。今振り返ると、「全ての試験をクリアできず、進級できなかったらどうしよう」という不安に私は押しつぶされそうになっていたのでしょう。試験勉強に追われ、気持ちに余裕がなくなりだすと、ふとした時にパニック発作を引き起こすようになったのです。

 とはいえ、当時は自分に起きている症状がパニック発作であるとは思ってもいませんでした。私の場合、急に、巨大な何かに後ろから追いかけられているような感覚と、それに伴う気の遠くなるような何とも言えない感覚に襲われます。それらの感覚がどんどん強くなるとともに、動悸と息苦しさを少々感じるようになるため、意図的に深呼吸を繰り返すようにすると、一連の症状は落ち着いていきます。

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症状を言葉に表現しにくく誰にも相談しなかったが