笑いは想定を超えるハプニングから生まれる。その典型的な動画が「初めてシリーズ」だ。江頭2:50がマクドナルドでフィレオフイッシュしか食べたことがないため、他のハンバーガーに挑戦する企画だったが、一切忖度しない。おいしいと感じたメニューは絶賛するが、そうでなかった場合は酷評して厳しい採点を下す。
「想定外中の想定外でした。そこまで言うか!って(笑)。芸能人って企業にマイナスのことは絶対に言わないじゃないですか。テレビで使ったらスポンサーにも怒られるのでカットする。実際にYouTubeで使うかどうかギリギリまで迷いました。でも、江頭さんと僕さえ怒られれば誰も迷惑を掛けないかなと腹をくくりました」
1本の動画の編集は4、5日間かけるという。藤野さんを含めてテレビでもトップクラスの編集技術を持つ4人のディレクターが、時には徹夜で作業する。
「江頭さんという価値をVTRの中で最大化させるために、突っ込みのテロップ、ワードセンス、カメラのアングルなど色々考えてどうやれば笑いが取れるか考えます。あとは動画の中での緩急ですね。ここで笑いを爆発させようとか、この場面は視聴者が飽きないようにテンポを上げようとか考え抜く。動画のコメント欄にもすべて目を通します。ありがたいメッセージが多いですが、批判的な意見は誤解されているケースも多い。その時は『思考の過程』を丁寧に伝えるように心掛けています」
藤野さんは、江頭2:50の「真面目じゃないとお笑いはできない」という言葉を肝に銘じているという。「江頭さんはストレッチでも大きい声で『1!2!3!』って数えるんです。なぜ大声で数えるのか聞いたら、『腹から声を出していないと、本番で声が出なかったらどうするんだよ』って。真面目に突き詰めている姿を見たら僕らが手を抜けるわけがない」と言葉に力を込める。
22年9月に渋谷公会堂で音楽と笑いの祭典「エガフェス」を開催した。大好物のアイスキャンディー「ガツンと、みかん」で赤城乳業にCM出演を逆オファーして実現するなど、全力で駆け抜けて夢をかなえている。
実は最近になり、テレビの人気番組から江頭2:50に出演オファーが殺到しているという。番組の内容はトークコーナーや街ブラ企画などが多い。江頭2:50は「エガちゃんねる以外は、体を張った江頭2:50のイメージをテレビで貫きたい」とすべて断っているという。
「不器用な生き方ですが、だからファンに愛されるのかなって。今は『世界の江頭』になることが大きな目標です。コロナも収束してきたので、いろいろな国でロケをして笑いを届けたい。現時点で詳細は言えませんが、皆さんを驚かす企画ができるかもしれません」
テレビでの仕事が激減して、落ち込んでいた江頭2:50はYouTubeを始めて人生に光が差し込んだ。「今が芸人人生で一番楽しい」と藤野さんに漏らしたという。
「江頭さんの楽しそうな姿を見るのはうれしいけど、調子に乗っていろいろな女の子を口説いているので気をつけないと。でも玉砕しているので、このまま玉砕し続けて欲しいです。これ全部書いてください」
笑顔で話す藤野さんの辛口のコメントに、愛情が詰まっていた。
(今川秀悟)