だが、18年に風向きが変わる。「『ぷっ』すま」、「めちゃイケ」など人気のバラエティー番組が次々に終了。コンプライアンスが厳しくなったこともあり、江頭2:50の芸風が敬遠され、テレビでの出演が激減する。この時はパチンコの営業などでギリギリ食いつないでいたという。藤野さんは当時をこう振り返る。
「江頭さんは根っからの明るい人間でない。会ったら本当に落ち込んでいて…。これだけ魅力的な『変人』が、嫌われ者で芸能界を去るのが嫌だったし、もったいない。もう一度人気者にできないかなって。その思いだけでした」
テレビ局や有料チャンネルのバラエティー番組に、江頭2:50を売り込むための企画書を持っていくが、先方の反応は芳しくなった。「それなら自分たちでやるしかない」。藤野さんはYouTubeチャンネル「エガちゃんねる」を運営して勝負をしようと腹をくくった。
20年1月にチャンネルを開設。「1年で100万人のチャンネル登録者数」を目標に掲げたが、1本目の動画を配信して9日後に100万人に到達した。だが、順風満帆だったわけではない。「お尻習字」など1、2回目の動画は広告審査が通らず収益は0円だった。
「何がNGだったのか悩んで1カ月以上試行錯誤しました。今でも月に2,3本広告が付かない動画がありますけど、それでいいかなって。テレビだったらできないことをYouTubeならお金さえ諦めればできる。他の動画で収益を頑張ろうと考えるようにしました」
YouTubeは立ち上げ当初に人気を集めても、その勢いを維持するのは簡単ではない。「エガちゃんねる」がチャンネル登録者数を順調に増やし続けるためには、江頭2:50の個性を引き出すスタッフの能力が欠かせない。時には1本の動画を撮るのに10ページ近くに及ぶ台本を用意。江頭さんにはこの台本の内容を伝えず、藤野さんが動画に出演する「ブリーフ団」やスタッフたちと綿密に打ち合わせをする。
「他のYouTuberさんと共演する時、たいていこの台本に驚かれますね。ただ、テレビ時代から台本を作るのは当たり前だったので自然な作業です。『企画は大胆に、詰めは繊細に』を心掛け、どんな展開でも対応できるように準備する。江頭さんは僕らの想像を超えてくるんですけどね(笑)」