「特定の人種や国籍の人たちに対する偏見や差別的な扱いに対しておかしいという憤りと、被害にあった当事者への共感もありましたが、公共訴訟という形に一つの希望を見いだしたのです」
関はかつて過ごしたアメリカで、司法が「最後の拠り所」として機能している様子を見てきた。
「アメリカにも韓国にも公共訴訟を担うプラットフォームはあるのに、日本にはない。弁護士が個人的な使命感と負担を背負うのではなく、これは社会で背負うべきコストだと思ったのです」
能條たちの被選挙権年齢引き下げ訴訟は、LEDGEが支援する初めての案件だ。原告は、能條ら19~25歳の6人。いずれも今春、鹿児島県議選や船橋市議選に立候補しようとして届け出が不受理となった。「年齢が低いというだけで立候補できないのは、憲法14条の法の下の平等に反する」ことを問う。
LEDGEは今後、外国人というだけで職務質問を受けるレイシャルプロファイリングの問題や中絶手術に配偶者の同意を必要とするといったセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR)の問題に対する集団訴訟も予定している。共通するのは、「今十分に聞かれていない人々の声を社会に反映させたい」という思いだ。谷口は言う。
「政治に若い人の声を反映させたいという問題提起のために立候補した能條さんたちは、『ルールを守れ』と苛烈なバッシングにあった。日本には社会を変えたいと声を上げる人たちを叩く『声を上げるフォビア』が蔓延しています。その社会そのものを公共訴訟という手段で変えたいんです。声を上げる人たちがいなければ社会は変わらないのです」
(文中敬称略)(ジャーナリスト・浜田敬子)
※AERA 2023年7月3日号