「春の園遊会」での伊藤美誠選手(代表撮影/JMPA)
「春の園遊会」での伊藤美誠選手(代表撮影/JMPA)

 次に雅子さまがした質問は、「一緒に何かされることは?」だった。伊藤さんと、隣にいるスピードスケートの高木美帆選手、2人への質問だった。雅子さまはきっと、伊藤さんと話しながら高木さんのことを気にかけていたのだと思う。伊藤さんの前に、お二人は高木さんと話をしたが、伊藤さんに比べ短かった。だから改めて2人に質問し、高木さんにも答えてもらおう。そう考えたのではないだろうか。2人は夏と冬の競技だから初めて会った、この機会に話ができてありがたい、そう感謝を口にしていた。

 園遊会終了後、2人は記者たちの取材を受け、感想を語った。「優しい時間が流れ、気持ちが安らぐような思いを感じました」と高木さん。「心が温かい方とお話をすると私自身も心が潤うので、お話しすることができてよかったです」と伊藤さん。陛下と雅子さまの対等な関係性があるから、雅子さまは自分のペースで招待者と向き合える。温かい心遣いも発揮できる。それが2人に伝わっていた。

 元車いすテニス選手の国枝さんとの会話からは、今らしい「今」が見えた。陛下は車いすテニスにとても詳しく、会話はとても弾んだ。国枝さんが「ありがとうございます、見ていただけてうれしいです」と言ったところで、雅子さまがこう言った。「ご家族さまですか?」。国枝さんの後方に、たぶん車いすを支えているからだと想像するが、女性がいた。その人へのお声がけだった。

 招待者と一緒にいる人が家族とは限らない。だから「ご家族さまですか?」。当然の質問だが、ぐっときた。「奥様ですか?」でなく、「ご家族さまですか?」だったのだ。「奥様」や「ご主人様」という呼称に疑問を感じる人は少なくない。それがジェンダー平等を目指す、今という時代だ。が、それに代わる適当な表現もなかなか見つからず、ついつい使ってしまう。私もそのひとりだから、「ご家族さま」がぐっときた。

 さて最後に紹介するのは、音声の入った映像の一番手、片岡仁左衛門さんとのやりとりだ。雨が強まってきたのに、仁左衛門さんは傘を差していなかった。なので陛下がまず、「傘を、よろしかったらお差しください」と勧めた。「はい、差させていただきましょう」と仁左衛門さんは答えたが、傘を広げる気配はなかった。

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皇室との距離感がまるで違うのだ