文筆業の仕事も急増しているピン芸人・バイク川崎バイクさん(撮影/中西正男)
文筆業の仕事も急増しているピン芸人・バイク川崎バイクさん(撮影/中西正男)

“BKB”の愛称とハイテンションなネタで知られるピン芸人・バイク川崎バイクさん(43)。最近では、新たに文筆業の仕事も急増しています。新型コロナ禍による自粛期間に書きためた短編小説をまとめた「BKBショートショート小説集 電話をしてるふり」を2020年に出版。先月、同著が文庫化(文春文庫)されたことで、官公庁からの原稿依頼も舞い込み、まさにモデルチェンジの最中でもあります。書く仕事の裏にあるピン芸人としての覚悟。そして、つかみ取った真理とは。

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もともと学生時代から書くことは好きだったんです。芸人になってからも、星新一さんの「ショートショート」のまねごとみたいな感じで、短くて胃の腑に落ちるような文章をたくさん書いてはいたんです。

ただ、あくまでも遊びというか、飲みに行った時に「銀シャリ」橋本(直)さんに朗読してもらって「ホンマに、それっぽいやないか!」とみんなで笑ったり。そんなノリの一部として書いていたものだったんです。

そんな中、コロナ禍で仕事がなくなりました。舞台や営業に行けない。じゃあ、その時間で何をするのか。思いついたのがSNSで文章を毎日発信するということでした。本当にありがたいことに、それが期せずして本になり、さらに文庫化もしていただくことになりました。

発信をしよう。何かをやり続けないと。その思いの根っこにあるのはピン芸人としての思い、もっと言うと“我の強さ”だと思います。

コンビなら相方がやってくれる部分もありますけど、一人だと自分が動かない限り、何一つ変わりません。これはピン芸人誰しもに当てはまることなんですけど、僕はことさらその意識が強いんです。

コンビだったら“じゃないほう芸人”として目立たないことがプラスになって番組に呼ばれることもありますけど、ピンにそういう流れはありえない。さらに、コンビは2人でやっているだけに、極端な話、解散となれば話題になりますし、そこまでもいかなくともドラマが生まれやすい。

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中西正男

中西正男

芸能記者。1974年、大阪府生まれ。立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当として、故桂米朝さんのインタビューなどお笑いを中心に取材にあたる。取材を通じて若手からベテランまで広く芸人との付き合いがある。2012年に同社を退社し、井上公造氏の事務所「KOZOクリエイターズ」に所属。「上沼・高田のクギズケ!」「す・またん!」(読売テレビ)、「キャッチ!」(中京テレビ)、「旬感LIVE とれたてっ!」(関西テレビ)、「松井愛のすこ~し愛して♡」(MBSラジオ)、「ウラのウラまで浦川です」(ABCラジオ)などに出演中。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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