バイク川崎バイクさん(撮影/中西正男)

でも、ピンは辞めるとなっても自分の意志で芸人を辞めるだけですから。特に、動きというかインパクトがない。活動の中にドラマが生まれにくいんです。

一方でしがらみもないし、全ては自分次第という潔さもあるんですよ。ただ、常に動いておかないと本当にどうにもならない。それを僕は痛感していて、その覚悟が小説にもつながったんだろうなと思っています。

そして、小説が新たな扉というか、キャラクターの幅を広げてくれたことも痛感しています。

バイク川崎バイクと言えば「BKBがつくフレーズを言って、最後は『ブンブン!』と締めるだけ。いつもそれだけでしょ?」と、ある意味、なめて見ている人が多い時期でもあったんです。

もちろん、なめるというか、気楽に、好きなように、見てくださったら大正解なんですよ。お高くとまっているとか、そんな思いは全くないんですけど、その度合いがキャラクターもあいまって、僕の場合はかなり強くなっていたなと。

これも何のめぐり合わせか、そこに「文章を書く」という要素が加わると、見てくださる側が「このBKBのフレーズにも、何か別の意味があるんじゃないか?」みたいに奥行きを感じてくださるようになったなとは感じています。

ネタに奥行きを感じてもらうのはありがたいことではあるんですけど、BKBはかなり“手前”で笑ってもらうネタなので(笑)。奥行きありきのネタではないんですけど「こちらをしっかり見てもらえる」という感覚は純粋にありがたいことだなとは思っています。

一般のお客さんだけではなく、芸人仲間からも言われるようになりました。「コットン」の西村(真二)からは「マジですごいですよね。バイクさんが楽屋でよく分からんことを言ってても『これは何か意味があるのかも……』と思って流せなくなりました」と言われまして。ほな、これまでは流しとったんかい!ということでもあるんですけど(笑)、文章を書くことで活動に広がりが出たのは間違いないことだなと感じています。

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