「社内ではカスハラ対応の教育もありましたが、実際にその通りに対応したことはありません。本当は周りの人に助けてもらいたかったし、自分が傷ついているとお客さまにも言いたかった。でも、業務量も多く、搭乗手続きにもリミットがある。淡々と聞き入れるしかなかった」
■面接不採用でカスハラ
また、接客業以外の場所でもカスハラは起きている。かつて大手企業で採用担当をしていた桶井道(おけいどん)さんは応募者からのカスハラに困った経験がある。
「店舗スタッフの募集で不採用にした方につきまといのようなことをされました。私を含め会社の従業員を見かけるたびにあいさつしてきたり、電車で隣の席に座ってきたり。直接危害を加えられたわけではありませんが、気味の悪さを感じました」
採用担当にとっては、応募者も顧客の一人。不採用にした人が店舗を利用する可能性もあり、対応も難しかったという。犯罪心理学が専門でカスハラ問題にも詳しい東洋大学の桐生正幸教授は言う。
「カスハラを規制するための法整備は急務ですが、最も重要なのは消費者教育。従業員と客はあくまでもサービスを授受する関係で、対等な存在。そこを混同してはいけません」
(編集部・福井しほ)
※AERA 2023年6月19日号より抜粋