「わっぱ飯 豚の生姜焼き定食」1千円(手前)と「オーガニック野菜の具沢山豚汁定食」950円(撮影/門間新弥)
「わっぱ飯 豚の生姜焼き定食」1千円(手前)と「オーガニック野菜の具沢山豚汁定食」950円(撮影/門間新弥)
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 SDGsがいわれ、食への感度が人材確保にもつながる時代。カロリー重視だった学食にも価値の更新が起こっている。食こそイノベーションの土台。東大と藝大がリードする。AERA 2023年6月19日号の記事を紹介する。

【写真】学外の人も利用ができ、小上がり席は子ども連れに人気の食堂の様子はこちら


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 東京大学生産技術研究所、同先端科学技術研究センターがある東京大学駒場IIキャンパス。いかにも理工系らしいコンクリートの建物が並ぶ一角に、学生、研究者だけでなく、子ども連れや女性グループらが集う、ちょっと雰囲気の違う場所がある。昨年10月に開業した学食「食堂コマニ」だ。


 メニューは鶏のから揚げや焼きサバをメインにした「本日の定食(1千円)」「おむすび(250円)」「オーガニック野菜の具沢山味噌(だくさんみそ)汁(450円)」「ぬか漬け(50円)」など。素朴なラインアップだが、山形県産の天日干し銘柄米をはじめ、海苔(のり)、味噌、醤油(しょうゆ)から昆布、かつお節、お茶まで、すべて全国の産地から選りすぐった食材を使い、丁寧に調理する“意識の高い”食堂である。


 誕生のきっかけは同キャンパスに研究室を構える准教授で建築家の川添善行さん(44)が、ニューヨークで見た光景だった。


■感度高い人惹きつける


「スタートアップ界隈(かいわい)では、優秀な人材が会社を選ぶ基準に、その会社で出す食事があった。健康的でトレンドに合った食事が、感度の高い人を惹きつける。イノベーションをうたう大学にこそ、そのような『食』が必要じゃないか、と痛感しました」


 安くて満腹になる従来型の学食は、すでに近接する「駒場Iキャンパス」にある。先端の知見が集まる駒場IIなら、新しい価値観を軸にした「食のプラットフォーム」ができるのではないか、と発想した。


 イメージしたのは、新丸ビル7階のシンボルフロア「丸の内ハウス」だった。ここは多彩な飲食店をフードコートのように並べることで、さまざまな仕事を持つ人たちが行き交う創発的な場になっている。フロアの仕掛け人である飲食店オーナーの佐藤俊博さん(71)、フロアマネージャーの玉田泉さん(61)が来店客たちをオープンに紹介しあうことで、多様な人々のネットワークが生まれていた。

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