■逆に値下がりしても、そのぶん枠が増えるわけではない。現行のNISAは「○年もののワイン(たとえば株式投資信託)をワインセラーから出してくる」感じだった。つみたてNISAなら、「ワインを買って『NISAワインセラー』に入れました。20年経ったら『特定口座ワインセラー』に移します」といったイメージ。新しいNISAでは、そういった概念がなくなる。「いくらで買ったか」が大事。複数回、同じ金融商品を買っていたら「平均いくらで買ったか」が焦点になる。
質問:新しいNISAで金融商品を売ると、非課税保有の「枠」が復活する。復活するのは売却した年の「翌年」。前年のいつまでに売れば、翌年に復活する?
回答:「売却注文を出し、『受け渡し』が年末までに完了していれば、翌年に復活する」(金融庁)
■受け渡しとは代金の決済をすること。日本の個別株や国内ETFは通常、約定日を含めて3営業日目が受け渡し日。株式投資信託は種類により約定日+2営業日以降だ。新しいNISAでは「12月30日(土日なら前営業日)までに証券口座に売却代金が振り込まれたら、翌年に枠が復活する」と思えばいい。
質問:枠の復活は最短で何年から?
回答:「29年以降。枠が復活するのは非課税保有限度額の上限1800万円まで投資し、その後に一部または全部を売却したあとの話だ」(金融庁)
■24年から毎年360万円を投資した人でも、枠を使い切るのは28年。仮に28年11月をもって1800万円分の投資を済ませ、12月に買値ベースで100万円分を売れば100万円分の「空き」ができるので、29年にその分の枠が復活するわけだ。
質問:成長投資枠で買った金融商品が値下がりした。損切り(損失を覚悟で売却)して翌年に枠を復活させ、買い直したほうがいい?
回答:「売却すると、買ったときの金額で枠が復活。この『損切りバージョン』の例は、『100万円で買ったものが50万円に下がって売却しました。復活する枠は100万円分です』となる。一見、非課税枠の面で得したように見えるが、枠の復活と投資判断は別の話。もう上がる見込みもなさそうだから売却して、その結果、枠が復活するという順番だ。『枠が復活するから売ろう』という考え方はしないほうがいい」(西原憲一さん/ファイナンシャルプランナー)
■損切りの売却により非課税枠で得したように感じても、「損切りなので、しっかり資産は減っている」ことをお忘れなく。
質問:株の配当やETFの分配金を自分で再投資に回したほうが複利で効率的にお金を増やせる。ただ、再投資すると、NISAの枠を新たに消費してしまう?
回答:「受け取った配当や分配金を再投資に回すと、新たに非課税保有限度額の枠を消費するのは事実」(金融庁、日本証券業協会)
■株の配当やETFの分配金を受け取ると、権利落ちにより評価額は(理論上)減る。配当や分配金を再投資に回した場合は単なる新規投資=新たに枠を消費したものとして扱われる。この観点から、ファンド内で分配金を再投資するタイプの株式投資信託のほうが、非課税保有限度額の枠を「最大限有効に使うという意味では」優れる。
(経済ジャーナリスト・向井翔太)
(編集部・中島晶子)
※AERA 2023年5月29日号