「父親や私にとって思い入れのある実家を残しても息子にはお荷物になってしまう。そう考え、自分が元気なうちに片付けなきゃ、という気持ちに切り替わりました」
「空き家バンク」制度を活用し、リフォーム代金の600万円で購入希望者を募ったところ、Uターンを希望する70代の夫婦が応札した。
これが7年前。振り返れば、実家が空き家になってから25年が経っていた。この間、固定資産税や火災・地震保険料、光熱費のほか、庭木の剪定や雑草駆除費で計1千万円。さらに、後片付けや遺品整理にかかる粗大ごみの処理費が100万円かかった。松本さんは1週間泊まりながら掃除や仕分けに明け暮れ、2トントラックで10回近く往復して粗大ゴミを処理した。
「本当は親が元気なうちに一緒に片付けや仕分けをするべきでした。思い出の品を娘と一緒に整理することで新しい思い出に変わる、といいますから」
移動費などの雑費とリフォーム代も加えると実家の維持に要した支出は25年間で計1800万円。それでも実家を手放したことに罪悪感が残ったという。
「父親に『すみません』という思いと、これで良かったんだという気持ちが半々でした」
松本さんはこう続けた。
「若いうちは自分の生活に追われ、実家や相続に関することは優先順位が低くなりがちです。いつかそのうちに、と考えているうちに建物の価値もどんどん下がります。親が元気なうちに明るい話題として実家じまいの話ができればいいですね」
(編集部・渡辺豪)
■松本明子さんからアドバイス3カ条
・実家の不要品の整理は親が元気なうちに一緒にやる
・「実家じまい」も親と話し合っておく
・住まない実家はなるべく早く手放す
※AERA 2023年5月22日号