AERA 2023年5月22日号より
AERA 2023年5月22日号より
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 誰もがいつかは直面する相続問題。だが、その手続きや制度を知らない人は多い。そのとき困らないために、「争族」にならないために必要なことは。今からできる準備を紹介する。AERA 2023年5月22日号の記事を紹介する。

【図】「エンディングノートに記しておきたいこと」はこちら

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 おそらく、このページを開いている読者のバックグラウンドは多種多様だろう。だが、ざっくりと分ければ、先々で何らかの遺産を受け継ぐ立場になる人たちと、いずれは誰かに財産を遺す立場になる人のどちらかに該当するのではないか? そして、その日が実際に訪れた際には、極力揉めたく(揉めさせたく)ないと願うのが人情だろう。

AERA 2023年5月22日号より
AERA 2023年5月22日号より

■自分自身の確認を

 しかしながら、今は相続税の課税対象者が拡大している。非課税だったとしても、遺族間で不協和音が生じているケースが多いのが現実だ。そこで、まずは自分自身に相続税が関わってくる可能性について無縁でいられるのかどうかを確認してみよう。

 遺す側はもちろん、遺される側も、相続税発生の可能性をあらかじめ把握しておくことは重要だ。たとえば、めぼしい遺産がすぐには換金できない不動産であった場合、納税資金の工面に苦労する恐れもある。加えて、遺す側としては、自分が所有している財産の内訳と残高について、存命中に一覧にまとめておくのが最低限の務めだ。いわゆる財産目録である。

「誰にどのような財産を相続させたいという自らの希望は、遺言書にきちんと記載しておかなければ、法的に有効だと認められない可能性が高いでしょう。本来、財産目録も遺言書に添えるものですが、エンディングノートにも記しておけば、相続人も把握しやすくて助かるはず」(同)

 遺言書には、(1)自筆証書遺言(2)公正証書遺言(3)秘密証書遺言の3種類がある。(1)は遺言の全文と氏名・日付を自書で記して押印するもので、手軽に作成できるのが利点。だが、所定の条件を満たしていないと無効になるし、真贋を巡って争いが発生する恐れがあるのも難点だ。

AERA 2023年5月22日号より
AERA 2023年5月22日号より

 (2)は本人と証人2人が公証役場へ出向いて作成するもので、費用はかかるものの、法的に有効なのが魅力。公証役場で保管してもらえるのも安心だが、遺言の内容は秘密にできない。(3)はその名の通り、遺言内容を秘密にできる。もっとも、費用がかかるうえにその内容次第では法的に無効となる可能性がある。

 一方、エンディングノートにおいては、デジタル絡みのID・パスワードや、葬儀・埋葬に関する希望、家族への思いやペットの行く末のことなどについて記しておくといい。(金融ジャーナリスト・大西洋平)

AERA 2023年5月22日号より抜粋