ただ、投資対象のリターンが年平均2%以下、かつ特定口座の金融商品の含み益がかなり大きい場合、NISA口座に移しても有利にならないケースが発生していた。
たとえば、「特定口座で保有する金融商品が元手の4倍まで値上がり=評価額の50~75%が含み益」の状態なら、「移すのはちょっと待った」。NISA口座に移したあとの上昇が年平均2%以下なら税金面で負ける可能性がある。
逆に言えばあなたが「今後も年平均2%以上の値上がりをする」と期待していて、かつ特定口座の金融商品が元手の2倍以下しか値上がりしていない場合、特定口座からいったん売却してでもNISA口座に移すほうがよさそうだ。
「特定口座から評価額400万円(元手200万円、含み益200万円)の金融商品を売却し、税引き後の360万円をNISA口座に移して30年間保有」「同条件の金融商品を特定口座で30年間保有し続け、税金の支払いを売却時まで先延ばしにする」の2パターンを検証した。
どちらのパターンも2年目以降はNISA口座で毎年360万円の投資をしたと仮定して、30年後の両者の資産を比較する。
運用1年目から30年目までの年平均リターンが2%、5%、10%の場合は、いずれもNISA口座に移したほうが有利になった。一番シンプルな「増えるだけ」のパターンの検証である。
しかし年5%のリターンでも、10年に1度の50%もの暴落に3回または2回見舞われると、NISA口座に移さないほうが有利な場合があった。
最終的に元本割れしたら、特定口座のほうが少し得。NISAの非課税メリットがなくなるので当たり前の話だ。
含み益のあった特定口座の資金をそのまま運用したほうが、損失額は若干減るというわけ。NISAで損をしたら、いいことは何もない。
実際のTOPIXを使ってあらゆる期間を検証すると、わずかだが「特定口座から移さないほうが有利だったパターン」もあった。