東証協力のもとAERAで検証
東証協力のもとAERAで検証

これまで買ってきた金融商品が特定口座で眠っている人はいったん税金を払い、売却してでも新しいNISA口座に移し替えるべき? アエラ増刊「AERA Money 2023春夏号」より抜粋してお届けする。

【図表】特定口座から新しいNISA口座に移すべきか30年検証を見る

 新しいNISAでたっぷり投資したいがお金がない。そんな人に向けて、こう言い切る人がいる。

「もし特定口座で投資信託(以下、投信)などを保有しているなら売って新しいNISA口座(以下、NISA口座)に移せ。そのほうが、いついかなる場合も有利」

 そう言われると「そうなのか」と思ってしまう。特定口座で運用中の金融資産に大きな含み益がある場合は?

 売却した際に払う税金のことを考えると「いついかなる場合も」と言えないのでは。

 いったん20.315%の税金を払ってでも非課税のNISA口座に資金を移すか。それとも、利益確定による税金の支払いを先延ばしにして、その分も運用し続ける効果を重視するか。

 このテーマに関し、本誌の試算結果をもとに、東証からコメントをいただいた。

「結局のところ、特定口座における税金の繰り延べ効果とNISA口座の非課税効果、どちらが大きいかという話ですね」(東証執行役員・長谷川高顕さん/以下同)

「大ざっぱ」な結論を先に。

「特定口座の資産にそれほど利益が出ておらず、将来の期待リターン(どれくらい上昇しそうか)が高いと判断するなら、早くNISA口座に移し替えるという考え方ができるでしょう(非課税効果>税金の繰り延べ効果)」

「特定口座の資産の含み益が大きく、将来の期待リターンが低いと判断するなら、NISA口座への移し替えは慎重にしたほうがいいという考え方もあります(非課税効果<税金の繰り延べ効果)」

 具体的に期待リターンが何%で含み益が何%以上の場合、特定口座からNISA口座に移さないほうがいいのか。

 東証の回答は「相場の動き方により結果が変わるため、厳密には数値化できない」。

 本誌の検証によれば、含み益があっても特定口座からNISA口座に移したほうが、ほとんどのケースで非課税メリットにより最終的な受け取り額が多くなることが多かった。

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中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。アエラ増刊「AERA Money」も担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などマネー関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

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