村上RADIOのスタジオで(TOKYO FM提供)
村上RADIOのスタジオで(TOKYO FM提供)

――村上RADIOを始めるとき、何人か気の置けない仲間に自宅で音楽を聴かせる風に、とおっしゃっていました。そのスタンスは変わらないわけですね。

 僕はジャズの店を辞めてからずっと1人で音楽を聴いてきたから、そろそろ誰かと一緒に聴いてもいいかなという気持ちになってきて。1人でいるのは全く苦痛じゃない人間だから1人で音楽を聴いてりゃいいやと思ってたんだけど、だんだんやっぱり人間が少し練れてきて、いまは人と一緒に聴いてもいいかなという感じです。

――春樹さんは、収録日になってリスナーが絶対知らないだろうなって曲を出してくる。いわゆる新譜ばっかりじゃない。そこが、春樹さんがDJをつとめる番組ならではの醍醐味という気がします。

 でも同時に、この前スガシカオさんと公開収録をやったとき(今年4月放送)に有名な曲ばかりかけたけど、2人で話しながらかけてると、有名な曲でも新鮮な印象が出てくるよね。「そうか、こういう聴き方があるんだ」とか「こういう感じ方があるんだ」とかいうのがあるじゃない? そういうものも必要なんだよね。

――番組から派生して「MURAKAMI JAM」というイベントも開きました。どんな思いでプロデュースをしたんですか。

 僕はジャズの店をやってるとき週末に生演奏をやってたから、生演奏には慣れてるんですよね。音楽ってね、レコードばっかり聴いていると偏っちゃうから、生の音楽を時々聴かないとうまくバランスが取れないんですよ。番組も生の音楽を時々入れないと、酸欠に近い状態になっていくんじゃないかなと思うんだよね。外気を取り入れないといけない。

――山下洋輔トリオの大隈講堂でのライブもそうした企画の一つですか。

 うん、ちょっと揺すってみるというか。毎月毎月同じ僕が喋って、音楽かけて、っていうのをやってると固まってきちゃうから時々揺さぶりをかけて、いろんなことをやらないと物事はうまく動いていかない気がするんですよね。それと、若い人がどれぐらい放送を聴いているのかわからないけど、普通だったら聴けないような音楽を若い人たちに聴いてほしいという気持ちはなくはないよね。

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思い出のストックが大切な燃料に