長く競技を続けた分、引退後のキャリア形成が難しくなる場合がある。それでも、35歳以上まで現役を続けた元スケルトン日本代表・中山英子さん、バレーボール五輪代表で実業団選手だった櫻井由香さんがキャリアへの迷いや葛藤を語った。AERA 2023年5月15日号の記事を紹介する。
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女性アスリートにとって、競技と結婚・出産は“トレードオフ”の関係となる場合がある。
「現役時代、恋愛は置き去りにしたかもしれない。でも、後悔はしていない」
そう話すのは、元スケルトン日本代表選手で、現在は地域創生コーディネーターとして活動をする中山英子さん(52)だ。新聞記者として長野五輪を取材したのがきっかけで、28歳でスケルトンを始めた。記者と選手を両立する中で、五輪大会に2度出場。30代は競技を極めることに全集中をしていたため、積極的に恋愛や結婚は考えなかった。しかし、2010年のバンクーバー五輪選考に落ちた直後の39歳の時、「私は子どもを持たない人生を送るのか?」と初めて思ったと中山さんは言う。
「今が、出産できる最後のチャンスとなるだろうと思った。ただ、短期間だけど交際した人と破局。出産しない人生になると思ったけど、そのことに迷いはなく、競技に再チャレンジしたいと思う自分がいた」
46歳まで現役を続けたが、3度目の五輪出場の希望はかなわなかった。それでも「やりきった」と思えたことで、すっきりした気持ちで引退をすることができたと思い返す。
引退後、東京五輪・パラ事業に関わったことで、長野五輪取材時に感じたことを再認識した。それは、スポーツや芸術を通じて、人の暮らしや心を豊かにしたいという思いだった。地元の長野県松本市でその思いを形にする活動を始める中、今年4月の松本市議選挙に出馬し、当選。
「これまでの仕事や競技経験を生かし、地域に貢献したい。また、今後はプライベートも充実させていきたい」(中山さん)