「僕たちも大変だけれど、大谷さんの笑顔見ていたら救われるよ」

 本当にありがたい言葉だった。

 また、しっかり寝ると、たいていのことは、たいしたことでなくなる。

 落ち込んでいても始まらない。

「頭なんて下げてもタダ」と、金融機関に頭を下げて、借入のお願いをした。

 貸してくれない銀行もあれば、貸してくれる銀行もあった。

 その頃、吉本興業オリックスと組んでファイナンス事業なども始めていた。

「しゃあないなあ」

 と、500万円貸してくれた。

 母親からも借りた。

 たぶん、みんなで4000万くらい借りた。

 ありがたいことにお金があると、さらに安心して寝られる。

「あせってもしかたない」

 どうせ今までの仕事がないなら、新しいことを考えよう。

 そして、それまで手をつけていなかった、インターネットを接続、IT化にチャレンジ。ウェブなどの制作もできるようにした。

 これが未来につながった。

 お客さんがITを導入する前に我が社が導入していたので、大手企業が導入したとき、みんながあたふたしていても、わたしたちがいろいろ教えてあげることができた。

「助かるよ」と、仕事をいただくだけでなく、感謝までされた。

 これが、わたしが32歳の時。この時から、わたしは、つらいこと、嫌なことがあったら、あえて、「まず寝る」ということにしている。

 どうしても眠れない時は、読書する。

 いちばん困るのは、眠れないのに次の日に仕事や大切な打ち合わせがあること。

 そんな時、休みを作る。徹夜しても次の日、一日眠れるようにする。

 そのくらい、「寝る」にこだわっている。

 もっとも、ありがたいことにわたしの場合、温かいものを食べて熱いお風呂に入ると、結構それで寝れる。

 今から考えたら、わたしの母もいろいろつらいことがあったはず。

 弟の家出、介護、嫁、姑、借金。

「つらい」と言わず、「とりあえず寝るわ」と、言っていたことを思い出す。

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