
40代半ば以上の方は覚えているかもしれない。シャープの「ZAURUS」、アップルの「Newton」、カシオ計算機の「カシオペア」。PDA(ポータブル・データ・アシスタンス)と呼ばれた、携帯情報端末だ。
1990年代半ばから急速に普及し、電子手帳を持っているビジネスマンも多かった。しかし、ガラケーの発達、そしてスマートフォンの登場でPDAはその居場所が全くなくなり、完全に死語となってしまっている。意外に知られていないのは、PDAという言葉を生み出した人は、アップルの社長やCEOを歴任したジョン・スカリー氏だということだ。
PDAでは住所録や電話帳の管理やスケジュール管理はもちろん、当時は専用のゲームソフト(マージャンや将棋と言った簡易なものが多かったが)も販売されていた。通信こそできないが、「iPhone」をはじめ、現在のスマートフォンの原型と言ってもいい。つまり、PDAに電話・通信機能をつけたものがスマートフォンなのだ。
一方、スマートフォンと同様に普及しているのが「タブレット」だ。これを「大きなスマホ」と捉えるか、「キーボードを廃した小さなパソコン」と捉えるかは、意見が分かれるかもしれない。だが、タブレットの代表格である「iPad」の名前をよく見ると、中に「PDA」が含まれている。PDAの名付け親がジョン・スカリー氏だったことを思えば、そこにもうひとつの意味を読みとることもできる。タブレットは、形を変えたPDAなのだ。あっと言う間に市場から追い出されたPDAは、ここに生きているのかもしれない。
では、タブレット市場は今後どのような動きを示すのだろう? 先述したように「小型化したパソコン」と捉えるか、「大きなスマホ」と捉えるかで大きく考え方は変わってくる。ガラケーの時代も普及当初は小型化が進んだが、「小さな画面は見づらい」という意見も多く、小型化の流れは消えていった。
スマホも小型化はせず、むしろ大画面化が進んでいる。タブレットの立場はどうだろう?スマホとして使うには大きすぎる。PCとして使うには、機能が制限されている。一部、マイクロソフトの「Surface」のように、明確に「タブレットとして使えるパソコン」としての立ち位置を明確にしているものもあるが、これをPDAの後継と考えてよいのかどうかは疑問が残る。
現状、PDAの後継者はiPadしかないのかもしれない。だが、ユーザーがタブレットに求めているものが何かによって、今後のタブレットがPDAであり続けられるかが決まる。