10年前は、「宮沢喜一元首相の孫」としてバラエティー番組に出演し、「おちょやん」以降はドラマでも引っ張りだこの宮澤エマさん。でも、彼女の原点は舞台だ。
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子どもの頃は「私って怠け者なんだ」という自覚があった。小学校には片道1時間かけて通っていたが、行きは座席でグーグーと眠りこけ、帰りの車内では読書三昧。小説や漫画を読みながら、空想の世界に浸っていた。休みの日は、一日中ベッドの上で、ゴロゴロ本を読みながら過ごすことも珍しくなかった。
「脳内で、物語を体験することで『あ~、これが私の幸せだ~』って思えるような子どもでした(笑)。割とシャイなところもあって、習い事とか、5歳年上のとても優秀で社交的な姉のやることに憧れて、とりあえず追いかけるものの一つもかなわない。5歳も違うんだから当たり前なんですけど、でも一つだけ、小学校に入学したとき、姉が入っていた演劇部の公演を観て、『あれだけは私のほうが上手にできる気がする』『あれならきっと私のほうがうまい』って思ったんです」
根拠のない自信だったが、実際に演劇部に入って、人前で大きな声でセリフを言ったとき、初めて「自分の声を見つけた!」と感じた。
「その頃からですね。将来は音楽か芝居をやりたいなって思い始めたのは。興味の幅が限られているものだから、夏休みの宿題も、『明日から学校だ』っていうタイミングまで何もやらなくて、『お姉ちゃ~ん!』って泣きつくようないい加減な子どもだったんですが(笑)、自分が好きなことに関しては負けず嫌いだった。今から思うと、お芝居は、自分の言葉じゃなくて人の言葉を借りてしゃべることができるから、それが私の性格に合っていたのかもしれないです」
とはいえ芸能の世界へ足を踏み入れたのは、アメリカの大学を卒業後の、23歳のときだった。最初は、元首相の孫ということで、バラエティー番組などで顔を売ることになるが、当時から、「歌とお芝居がやりたい」という気持ちは一貫していた。でも、「歌」と「芝居」がいっぺんにできる「ミュージカル」に出演できるとは思っていなかった。