「ミュージカル自体は大好きでしたが、あれは、歌えて踊れて芝居ができる特別な人たちがやるもの、特別なトレーニングを受けた人たちがやるものという認識でした」

 ところがあるとき、高校時代のエマさんの歌声を聴いたことがあった宮本亞門さんから「ミュージカルのオーディションがある」と誘われた。そのミュージカルがさほどダンスの場面がなかったことに勇気づけられ、オーディションを受けることに。実際には、誘われた作品ではなく、その次のミュージカルのメインキャストに抜擢された。

「それが私の舞台人生の始まりでした。その後も、オーディションに通ったり通らなかったり、オファーをいただけるようになったりならなかったり。4年ぐらいそんな状況が続いたんです。その間、映像のお芝居とかストレートプレイもやってみたいと思っていたんですが、映像に出演するきっかけを作ってくださったのが三谷(幸喜)さんでした。三谷さん書き下ろしのミュージカル『日本の歴史』に出演することが決まったタイミングで、中井貴一さん主演の映画『記憶にございません!』にも出させていただくことになり、それによって映像の方にもお声がけいただけるようになったんです」

 映画が公開されたのが2019年9月。それからほどなくして、NHK連続テレビ小説「おちょやん」に出演のオファーがあった。ずっとやりたかった映像の仕事。張り切って撮影に臨む中、新型コロナウイルスのパンデミックが起こる。

「私が出演する予定だった舞台で上演中止になったものは、『ウエスト・サイド・ストーリー』だけでしたが、ステイホーム期は、『舞台の存在意義ってなんだろう?』みたいなことはすごく考えました。21年の夏からは『鎌倉殿の13人』の撮影に入ることになっていたので、去年1年間は、デビューから8年ずっと必死に頑張ってきた舞台の仕事から、いったん離れたタイミングでもあったんです。そんな中で、今回『ラビット・ホール』という舞台で、主演のお話をいただいて。正直ちょっと荷が重いんじゃないかって、すごく真剣に悩みました。でも、このチャンスを逃したら一生後悔すると思って」

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