そこで、それまでずっと気になっていた、シリコンバレーを活用できない日本企業が多くいることに対して溜まったフラストレーションが強烈な危機感へと変わり、シリコンバレーと日本を直接結ぶプロジェクトを立ち上げた。APARCではじめた「Silicon Valley-New Japan Project」というもので、当時のジャパンプログラムのディレクターを務めていた星岳雄先生のサポートを受け、スタンフォードの米国・アジア技術経営研究センターのリチャード・ダッシャー所長の応援のもと、学術アウトプットを超えたさまざまな活動を行った。
本書でも取り上げている社会科学研究の社会実装であり、産学連携のプロジェクトだった。日本企業はもっと効果的にシリコンバレーを活用することができ、シリコンバレーでの日本のプレゼンスを高めれば双方ともメリットが多いはずだという確信からだった。
パンデミックになるまでこのプロジェクトは毎月の公開フォーラムや、イシンというスタートアップのメディアを扱う会社と組んで大規模なイベント、「Silicon Valley-New Japan Summit」などを行った。多くの協賛企業にサポートされた取り組みはどんどん拡大していき、「シリコンバレーの日本企業が陥るワーストプラクティス」集など、シリコンバレーのエコシステムを理解した上での提言や、シリコンバレー向けに日本企業の興味深い取り組みの紹介もできた。
※続きは書籍『未来を創造するスタンフォードのマインドセット イノベーション&社会変革の新実装』でお楽しみください
櫛田健児
カーネギー国際平和財団シニアフェロー。シリコンバレーと日本を結ぶJapan-Silicon Valley Innovation Initiative@Carnegieプロジェクトリーダー。キヤノングローバル戦略研究所インターナショナルリサーチフェロー。東京財団政策研究所主席研究員。スタンフォード大学非常勤講師(2022年春学期、2023年冬学期)。1978年生まれ、日本育ち。スタンフォード大学で経済学、東アジア研究それぞれの学士号、東アジア研究の修士号修了。カリフォルニア大学バークレー校政治学博士号修了。スタンフォード大学アジア太平洋研究所でポスドク修了、リサーチアソシエイト、リサーチスカラーを務めた。2022年1月から現職。主な研究と活動のテーマは、(1)Global Japan, Innovative Japan、(2)シリコンバレーのエコシステムとイノベーション、(3)日本企業のシリコンバレー活用、グローバル活躍、DX、(4)日本の政治経済システムの変貌やスタートアップエコシスムの発展、(5)アメリカの政治社会的分断の日本への紹介など。学術論文、一般向け書籍やメディア記事、書籍を多数出版。