──先生には気づかれませんでしたか?
戸川:最初にアンケートを書かされて、具体的に何を習いたいか1行で書いてくれとありましたので、ベルカント唱法のファルセットとキーを上げたいという二つを書きました。それで先生が私の声を聞いて、私あなたを知っているかもしれないわと言って。じゃあプロなら自分の持ち歌を歌っていただけますかと言われたので「ヴィールス」(ヤプーズの楽曲。作詞:戸川純、作曲:平沢進)というファルセットが入る高い曲があるんですが、それを歌ったら「あなた、戸川純さんだったのね!」って。
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ライブ活動ができなくなったコロナ禍、YouTubeで「戸川純の人生相談」チャンネルを開設。80年代にカルチャー雑誌の「宝島」でも人生相談の連載をしていたが、それから数十年。『戸川純の人生相談~どうしたらいいかな、純ちゃん~』として書籍化された。
本書では、質問者の質問に答える形で思いがけない戸川さんの人生観やエピソードが出てくる。「Dr.スランプ アラレちゃん」のアラレちゃん役のオーディションの最終選考に残っていたとか、萩本欽一さんに呼ばれて2時間の台本の読み合わせをして、「あの子の笑いは、(夜の)8時台の笑いではなく、10時台の笑いだ」「すごく良いものを持っているから、じきに頭角を表すよ」と言われたという貴重なエピソードが披露されている。
戸川:人生相談は、コロナの間ファンの方の前に姿を現さないのもなんですから、少しでも不安を和らげることができて観てほっこりするものをと思って始めたら、かなり真剣なお悩みが。
──しかも世界各地から届いていますね。
戸川:まだ戦争をしていなかったロシアやウクライナからも。ブラジルや中国、ペルーやイタリアの方からもいただきました。みなさんちゃんと日本語を勉強なさっていて。
──『戸川純全歌詞解説集』も出されましたが、いま小説を執筆されているそうですね。
戸川:80年代にデビューしたときに、いまでいう「メンヘラ」「ヤンデレ」というレッテルを貼られて、相変わらずそのイメージがあるので、私がこういうのを書けば気が晴れるんでしょ!みたいな感じの屈折した内容のものです。でも、どんなに暗くて重いテーマでも、私はポップなエンターテインメントなものを書いていると思っています。