作品ごとに役に染まることのできる俳優は、ときに「カメレオン俳優」と呼ばれることがある。昨年公開された映画「PLAN 75」では、75歳以上に死を推奨する役人を、サウナ好きによるサウナ好きのためのドラマ「サ道」では、おじさんに交じってサウナを愛でる“イケメン蒸し男”を、映画「東京リベンジャーズ」シリーズではピュアで陽気な不良をそれぞれ演じる磯村勇斗さんは、まさに役に染まり続けている「カメレオン俳優」そのものだ。
「そんなふうに言っていただけてるのは、俳優としての需要があるということだと思うので、ありがたいです。この先呼んでいただけることが少なくなったときは、もうちょっと違う作戦を立てていかないといけないのかもしれないですが、それはそのときに考えることにして、しばらくはこのイメージの固定されにくい見た目を武器にしていければいいのかな、と(笑)」
語り口は実直で爽やかだが、ものづくりにかける熱量は半端ない。その確かな演技力を裏付けるように、毎回、準備にはじっくり時間をかける。
「もちろん、現場で生まれるものを大事にしたい気持ちは強いのですが、俳優の仕事には、準備段階でできることが結構あるので、そこは徹底的にやります。事前に役を作り込んでいって、現場で余計なものを捨てるパターンです(笑)。たとえば楽器を演奏する役なら、必要なスキルを身につけて臨みたいと思いますし、映画は特殊な世界を描くことも多いので、役に合った体づくりや、役の置かれている環境を掘り下げるために、その仕事の背景について深く調べたりもします。だから準備期間は多ければ多いほどいいです」
自身の性格を分析してもらうと、「こだわりが強くて頑固。何でも徹底してやるほう」という。
「役に共感できるかどうかはあまり気にしないです。たとえ役の心情がわからなくても、そこは脚本や共演者の方に導かれることが大いにあるので、かえって現場が楽しみになる。俳優になってわかったことは、役の感情は台本を読んで想像するだけではリアリティーがないけど、現場で監督や共演者の方とセッションしていると、自分でも味わったことのないような怒りや哀しみや喜びが、その場で湧き上がるということでした」