■党の防衛政策は信頼得られない
──松竹さんは、共産党が掲げる安全保障政策として「核抑止抜きの専守防衛」を提言しています。
日本は専守防衛に徹するべきであり、日米安保条約と自衛隊の維持を前提にしますが、米国の核抑止には頼らず、通常兵器による抑止にとどめることを基本政策にするのです。集団的自衛権の行使を容認した安保法制により専守防衛を逸脱した与党と、専守防衛を堅持する野党との間の対立軸が明確になり、野党間で政権構想などを議論する「共通の土俵」もできます。
核抑止抜きでは、安全保障は成り立たないという主張が現在の国際政治の専門家の間では多数を占めています。しかし、ロシアのプーチン大統領の核による威嚇発言は世界中から非難を浴びることになりましたが、日本がいざという時に米国の核に頼るのはそれと同じことです。戦後の反核運動を担ってきた政党としても譲れない一線です。
──共産党は選挙の時に立憲民主党などとの政権構想に、党綱領に掲げている安保「廃棄」などを持ち込まないと表明しました。
党と政権とで基本政策を使い分けるというのは、あまりにご都合主義的で国民の理解を得られないと思います。00年の党大会決議では、軍事力のない社会に至る道筋を三つの段階に分けています。第1段階は、日米安保も自衛隊も存在していることが前提です。第2段階で日米安保が廃棄され、第3段階で自衛隊も解消するというものです。私は、この3段階論を支持します。
ですが、第1段階では他国から侵略されたら日米安保も自衛隊も使うと明言しながら、党の基本政策は安保廃棄・自衛隊解消のままですから、国民に説明がつきません。しかも、国民の意思を踏まえなければ次の段階には進めないことになっていますから、北朝鮮のミサイル発射実験や台湾有事が憂慮される現在、第1段階がかなり長期間に及ぶことが予想されます。共産党が国民から信頼を勝ち取るための基本政策こそが「核抑止抜きの専守防衛」なのです。
(構成/本誌・亀井洋志)
※週刊朝日 2023年3月31日号