これまで何度もドラマ化・映画化されてきた人気漫画「静かなるドン」が令和になって初めて映画化された。時代と共に衰退の一途をたどろうとしている任侠作品の火を消すまいと、企画から携わったのは、Vシネマ界を牽引(けんいん)し続ける本宮泰風。主演の伊藤健太郎と語り合った。
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──「静かなるドン」は関東最大規模の暴力団新鮮組総長の一人息子でありながら、ヤクザを嫌い堅気の会社員生活を送る近藤静也(伊藤健太郎)が主人公。父の突然の死によって跡目を継ぐ羽目になるが……。静也を支える猪首硬四郎を演じた本宮さんは出演だけでなく、総合プロデューサーとして、本作りやスタッフ集めなどから資金管理まで幅広く関わった。
本宮:僕はプロデューサーという立場では、これまでオリジナル作品ばかりに関わってきました。でも、昭和の時代の名作「静かなるドン」を令和の今によみがえらせたら面白そうだなと思ったんです。主演の伊藤健太郎は過去作品と比べてみても、色が被っていない。健太郎で作ったら必然的に新しい作品が撮れると主演は彼一択でした。
伊藤:すごくうれしかったです。「静かなるドン」は内容をよく知らなくても、タイトルは僕らの世代でも知っている人が多い。そういう意味でも参加させていただけたのは、すごくうれしいです。静也のキャラクターや世界観などを知れば知るほど僕の好きな世界観だと感じていました。
本宮:任侠作品は時代劇と同じで勧善懲悪を端的に表現できます。悪いヤツは時代劇では斬られて死に、任侠作品では撃たれて死ぬ、みたいな。単純な出来事の中で気持ちが揺れ動く。僕はここがわかりやすくて好きなんです。でも残念ながら、時代劇も任侠作品も衰退の一途をたどっている。若者はたぶん、任侠作品と触れ合ってもいないですよね。
伊藤:僕は両親が任侠モノをけっこう好きで見ていたこともあって、子どもの頃から視界には入っていました。親からの教えも義理人情を大切にするように言われてました。