人形村・徳島県三好市名頃集落(写真・伊藤菜々子)
人形村・徳島県三好市名頃集落(写真・伊藤菜々子)
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 日本にとって喫緊の課題と言われている「人口減少問題」。岸田内閣は異次元の少子化対策を打ち出し、この6月により具体的な「こども未来戦略方針」を正式決定した。しかし、日本社会にはもう一つ、「高齢化」という大きな問題を抱えている。2025年 には団塊の世代が後期高齢者になり、後期高齢者が2200万人に膨れ上がることになる。その先にはどんな悲惨な状況が待ち構えているのか。日本国際交流センター執行理事の毛受敏浩氏の著作『人口亡国 移民で生まれ変わるニッポン』(朝日新書)より一部を抜粋、再編集し、紹介する。

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■高齢化の象徴「人形村」

 日本の高齢化は世界でも広く知れわたっている。

 筆者はアメリカのベテラン・ジャーナリストの日本での取材を支援したことがある。ナショナル・パブリック・ラジオの記者、アイナ・ジャッフィ氏が関心を持ったのが四国の山奥にある「人形村」だった。

 それは徳島県三好市の標高800メートルの名頃集落で、100体以上の人間を真似たかかしが村のあちこちに置かれている。かかしは言ってみれば、人がいなくなった村の「バーチャルな村民」と言えるかもしれない。

 大阪から故郷の名頃に戻った女性がこつこつと作り始め、数十名の村落の人口をはるかに超えるかかしが限界集落となった村のあちこちに置かれている。一見、シュールともいえるこの光景をアメリカ人の記者は高齢化日本を象徴する場所と考えた。人里離れたこの場所を訪れ、これらの人形を作った女性作家と会った記者は、作家との対談を通して人形村の様子を全米に報じた。

 高齢者ばかりが住む場所が増え続ける日本の現実は極めて厳しい。地震、台風に加えて異常気象による洪水や山崩れが多発する日本。一度、災害が起これば若者がいない社会では助かる命が助からない。高齢者同士で助け合うには限界があることは明らかだ。高齢者の村で人形を作って賑わいを演出しても人形が高齢者を助けてくれることはない。

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