竹中夏海さん
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竹中さんの最新刊『アイドル=ヒロイン~歌って踊る戦う女の子がいる限り、世界は美しい~』
竹中さんの前作『IDOL DANCE!!!~歌って踊るカワイイ女の子がいる限り、世界は楽しい~』
PASSPO☆
PASSPO☆のアルバム『TRACKS』(ファーストクラス盤)
夢みるアドレセンスのアルバム『第一思春期。』

 前回に引き続いて振付師・竹中夏海さんのインタビューをお届けする。20日と21日に行なわれた2冊目の著書「アイドル=ヒロイン~歌って踊る戦う女の子がいる限り、世界は美しい~」(ポット出版)のリリースイベントも大盛況。アイドル愛を熱くみなぎらせたトークの数々をお楽しみいただきたい。

――竹中さんの振り付けを見ていると、「なんだ、このフォーメーションは!」とびっくりさせられます。たとえばアップアップガールズ(仮)のパフォーマンスを、ぼくは上手でも下手でも2回でも3回でも見たことがありますが、そのつど新しい発見があるんです。

竹中 もともと私はチアダンスをやっていたんです。チアダンスは割とフォーメーションがくるくる変わっていくジャンルなんですね。フォーメーションを考えることは私にとって大前提で、正面から見たときには気付かない演出が上から見たときに気づいてもらえるとか、そういう発見があったらいいなと思いながら振りをつけています。(ファンは)何回も繰り返し同じ曲を見ることになると思うので、1回では気づかないけど何回か見ているうちに気づいてもらえたらいいな、という場面を入れたりもしますね。

――PASSPO☆は、けっこう小道具も使っています。

竹中 小道具は好きです。用意は大変ですけどね。そこは運営との戦いです(笑)。提案してもらうこともあるんですが、結局やっぱり私が、作る側の気分が乗ってるほうがいいものができますね。でんぱ組.incの《でんでんぱっしょん》の、リボンを使った振り付けがものすごくいいなと思って、振り付けの先生に尋ねたことがあるんですよ。「指定があったんですか、それとも先生が考えたんですか」って。やっぱり先生の提案だった。女子流ちゃん(東京女子流)も小道具使うんですけど、それも、ほぼ振り付けの先生の提案だった。「やっぱりそうだよな」と思って。振りをつける側が乗って考えたもののほうが、お客さんもメンバーもやりやすかったり乗りやすかったりするんだろうなとは思いますね。

――《でんでんぱっしょん》の振りは新体操風というか…

竹中 振り付けの先生が(新体操を)やってたらしいんですよ。ほんとだったら演技中にはしない、リボンをしまうためにクルクルクルって床で回して、リボンをすくう振りがあるんですけど、それを振り付けの中に入れてて、「これは新体操の経験がないと浮かばない振り付けだな」と思った。みりんちゃん(でんぱ組.incメンバーの古川未鈴)も新体操の経験がありますよね。

――小道具ではないですけど、その曲や派生ユニットだけの特別な衣装というのもいいですね。PASSPO☆の派生ユニットの“はっちゃけ隊”(森詩織、安斉奈緒美、岩村捺未、藤本有紀美)の《気分はサイコー!サイコー!サイコー!》は、曲とダンスと衣装のマッチ具合が尋常ではないと思います。この歌のリフレインを聴くと、やはり竹中さんが振り付けを担当された爆乳ヤンキーの《ブラを探して》(2010年)を思い出すんですが…

竹中 彼女たち(爆乳ヤンキー)もPASSPO☆と同じ事務所なんですよ。「こういうユニットあるんですけど、振り付けしませんか」といわれて、「やりますやります」と答えて。姉妹ユニットではないんですけど、曲を作ってる人たちもPASSPO☆とは近いんです。こういう悪乗り系も好きですね。

――2013年からは、夢みるアドレセンスの振り付けも担当されています。

竹中 夢アドはかりんちゃん(荻野可鈴)が、割とちゃんとしたリーダーなんですよね、リーダーらしいリーダーというか。

――PASSPO☆のキャプテン(リーダー)である根岸愛さんは?

竹中 最初は全然だめだったんですよ。静かな子で、もともと仕切るようなタイプじゃなかったので。でも彼女はすごく努力家で、ステージ上で言わなきゃいけないことだったりとか、締めるところで締めたりという経験をちょっとずつしていくことによってメンバーからの信頼も大きくなって、それでだんだん成長した感じですね。意識がもともと高かったからキャプテンに指名されたということではあるんですけど、始めの頃は、今となっては信じられないほど頼りなかった。ステージ以外のメンバーまわりのことは、なおみさん(安斉奈緒美)がやってくれています。

――夢アドの荻野さんは前面に出てガンガンまとめていくタイプですか?

竹中 「なんで自主練してこなかったの?」というようなこともちゃんと言うんですね。それができるリーダーはあんまりいないんで、「すごいなあ」と思って。メンバーの仲はすごくいいんですけど、ちゃんとしなきゃいけないところはかりんちゃんが緊張感を持たす。それに彼女は頭の回転がメチャクチャ速い。振り覚えもいちばん早い。夢アドには、かりんちゃんとゆうちゃん(志田友美)という2種類の違うタイプの天才がいるんです。ゆうちゃんはムラがあって、何が飛び出すかわからないみたいな感じ(笑)。

 あと、すごくきれいなふたりがいるんですが、れいちゃん(小林玲)もあかりちゃん(山田朱莉)も、いい意味で凡人なんですよ。ものすごい普通の感覚を持っているというか。れいちゃんはメチャクチャ努力する子なですね。でも努力をあんまり努力だと思ってない。努力するのが当たり前だと思っていて、静かに努力している感じです。あかりちゃんはあんなにきれいなのに、「自分なんかが人前に立っていいのか」みたいに思ってるところがある。そういう気弱な面もかわいいんです(笑)。あのルックスで自信満々だったら逆にアイドルヲタはひいちゃうじゃないですか。そして最年少がきょうちゃん(京佳)。すごくいいバランスだと思います。

――夢アドも曲のパターンがどんどん増えています。年末の東京国際フォーラム公演でも感じたのですが、振付のバリエーションもものすごく豊かになったと思います。竹中さんが携わった他のグル―プのライヴを見ていても思うのですが、「どうしてこんなにたくさんのタイプの異なる楽曲の振り付けを考え出せるのか」と驚くばかりです。

竹中 曲と歌詞が違えば、振り付けも違ってくるんです。私は、「振り付けとは50を100にする作業」だと思っています。曲を作る方たちは0の段階からそれを50にしていく作業。そっちのほうがすごいなと思います。振り付けはドラマや舞台でいうと演出みたいなもの。脚本を書く方があってこその、演出なんです。<第3回に続く>[次回2/16(月)更新予定]

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