この鬼はピンチに陥ると、積怒(せきど)、可楽(からく)、空喜(うろぎ)、哀絶(あいぜつ)に分裂し、のちにまた合体して、その姿を憎珀天(ぞうはくてん)に変えるのだが、分裂体それぞれの特性を生かした戦いをすることで、人数の多い鬼殺隊側を巧みに翻弄していくのだった。

■半天狗の戦い方

 最初、老人の姿をしていた半天狗は、無一郎の「移流斬り」をうまくかわし、その直後に油断を誘って、「可楽」の姿となっている。ヤツデの葉のうちわで無一郎を遠方まで吹き飛ばすことに成功するなど戦略の立て方がうまい。炭治郎たちも「可楽」のうちわのすさまじい風圧、「空喜」による衝撃波、「哀絶」の十文字槍の刺突技、「積怒」の錫杖から放たれる雷攻撃に苦戦した。

「積怒」が他の鬼たちを吸収して「憎珀天」になると、樹木の特性を持つ、うねりながら伸びる竜「石竜子=トカゲ」が発動され、この竜の頭部分から繰り出される技の数々によって、炭治郎たちはその対処に困難を極めた。

■「感情」から発動される強さ

 コミックス14巻では半天狗は「追い込まれれば追い込まれる程 強くなる鬼だ」と述べられている。そして「己の身を守ってくれる強い感情を血鬼術により具現化・分裂」する性質を持つため、鬼殺隊からの攻撃が増すほどに、半天狗も「強く」なるのだった。しかも、攻撃された半天狗が増幅させる「感情」や、根底にある「性格」は厄介極まりない。

 極小になって逃げ惑う半天狗本体を守るために出現した「憎珀天」は、こんな言葉を吐いている。

「先程貴様らは 手のひらに乗るような<小さく弱き者>を斬ろうとした 何という極悪非道」(憎珀天/14巻・第116話「極悪人」)

 かつて炎柱・煉獄杏寿郎が命をかけて守ろうとした「か弱き人たち」という言葉を真っ向から否定するような憎珀天の言い草に、炭治郎の怒りは頂点に達する。本体の半天狗も、己を「善良な弱者だ」と主張し、自分を責める他者に憎しみの心を向ける。この身勝手な感情こそが、半天狗の強さの源なのだ。

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鬼と人間に横たわる「境界線」