もっとも、広末の場合は聖子以上に貪欲で、それはもう「広末イズム」と呼べるかもしれない。聖子は40歳を過ぎたあたりから落ち着いていった印象だが、広末は前出の「ベストマザー賞」や哲学本など、まだまだ仕事と好感度の幅を広げようとしていた。
現在放送中のNHK朝ドラ「らんまん」では、序盤に主人公の母役として登場。優しく美しいが、病弱で早死にする役どころだった。かと思えば、2014年の主演ドラマ「聖女」(NHK総合)のように、聖女と見せかけつつ男たちを不幸にする悪女の役もできる。
女優としては素晴らしいことだが、実人生でよき妻・よき母と不倫する魔性の女とを両立させるのは不可能だ。今回の一件は、無理のある拡大戦略がついに破綻したということかもしれない。
ちなみに、斉藤由貴はもう、ワケアリ的なクセのある役しかやらなくなっている印象だ。17年の「お母さん、娘をやめていいですか?」(NHK総合)で見せた毒母の芝居など圧巻だった。イメージに合った(?)仕事だけを職人的にこなしているところも、反感を買いにくいゆえんだろう。
また、そこには彼女がデビューしたときのアイドルシーンも幸いしている。
デビューしたのは85年で、アイドルが飽和状態となった年だった。聖子らの80年組、明菜らの82年組がいて、菊池桃子や岡田有希子、荻野目洋子といった84年組もそこに加わり、しかも85年組自体がなかなかの当たり年。斉藤以外に中山美穂、南野陽子、浅香唯、本田美奈子、芳本美代子、松本典子らがいて、おニャン子クラブまで登場した。
アイドルファンの人口も多かったので、斉藤の人気もかなりのものだったが、それでもたくさんいるなかのひとりという立ち位置。そこからちょっと個性的な生き方をしていっても、まぁ、そういう人もいるよねという見方をされやすい。
その点、広末がブレークした96年は、人気アイドルが数えるほどしかいなかった。しかも、彼女はそのなかの突出した存在。こういう人は、同世代から永遠の輝きを期待されがちだ。