かたや、斉藤はコンプレックスの塊で、少女マンガや映画といったフィクションに救いを求めるような、今でいう「腐女子」タイプ。筆者がインタビューした際には「美しい子ではなかったから、耽美的な世界に惹かれた」とも言っていた。

 それゆえ、デビュー時から芸術志向を強く打ち出し、おかげで早い時期に、芸術家肌の女優だというイメージを獲得。一方、広末にも芸術やアカデミックなものへの憧れはあり、それが早稲田進学にもつながるわけだが、そこにはどこか後付け感も漂っていた。つまり、いろいろと恵まれていた人がさらなるステップアップのために、あれこれ欲張っているという印象だ。

 とはいえ、これは彼女の生き方というか、身上でもある。23歳での「できちゃった婚」について、彼女はこう振り返っている。

「ひとつのものを手にするためにもう片方を諦めるような生き方を、私はしたくありませんでした。それに、結婚しても子供を持ってもこの仕事は続けられるんだ、ということを自分を通して証明したかったんです。(略)まずは私が腹をくくって『やろう』と決めたんです」(女の転職type)

 パイオニアのように語っているが、実際にはこの十数年前に松田聖子がその「証明」をしていた。いわば「聖子イズム」を継承したのが広末だったのだ。

 なお、それ以前には「百恵イズム」というものもあった。70年代の象徴的アイドル山口百恵のように、世間が祝福するような結婚をして、その後は主婦業に専念することをよしとする生き方だ。80年代にはこの生き方に影響された人も多く、中森明菜はこれを目指して葛藤することになる。

 ただ、90年代には「聖子イズム」のほうが優勢に変わった。その波をもろにこうむり、実践したのが広末たちの世代だ。

 彼女の2カ月後に生まれた榎本加奈子は、略奪愛のようなかたちで球界の大物と結婚。1学年上のともさかりえは、演出家やミュージシャンと結婚離婚を繰り返したあと、現在は一般人と三度目の結婚をしている。同じく1学年上の奥菜恵も、三度目の結婚中だ。

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広末は松田聖子よりも「貪欲」