その期待に応え続けることで、カリスマ化しているのが吉永小百合だろう。広末が早稲田に入って吉永の後輩になったときには何かと比較されたものだが、その後の展開は対照的。それでもきわどいかたちながら、同世代にとっての永遠の輝きを彼女も保ってきたといえる。
ただ、今回の件で裏切られたと感じる人が大多数であるようなら、そのダメージはやはり深刻だ。
しかし、芸能界は本来、欲張ってナンボの世界であるはず。売れて稼いで、恋も食べ物も普通ではありえないほどおいしい思いを味わえる――。有名フレンチシェフとの不倫はいかにも、そんな芸能人的欲望を彼女が持ち前の正直さで追い求めた結果なのだろう。
気の毒にもさらされてしまった「ラブレター」の文面からも、その正直さが見て取れる。正直さをピュアと言い換えるなら、同世代の女性たちが驚くあの透明感も、そういう生き方によってじつは保たれているのかもしれない。
それこそが芸能の不思議な妙味ともいえる。だとしたら、ふしだらなことがどうしても許せない人や傷つく家族にとにかく同情したい人はさておき、そうでもない人はもっとこのスキャンダルにその妙味を見いだしてもよいのではないか。
なんだかんだいって、広末は今回もひとつのエンタメを提供してくれた。逆風にめげることなく復活して、若くして時代を作った芸能人のすごみを見せつけてほしい。
●宝泉薫(ほうせん・かおる)/1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など