例えば、仕事も含めてスムーズに生きることを大事にして頑張ってきた人なら、一旦仕事の手を止めて、頑張りの容量をそこに差し向けないで、本気で友達を作る努力をしてみるとか。そしたら報告会ができるはずです。「お母さん、こんなことしてみたけど、失敗しちゃった」と。子どもが「バカだなぁ、こうすればいいよ」とアドバイスする立場になって初めて、一緒に頑張っていく準備ができます。


 一方が「救ってあげなきゃ、教えてあげなきゃ」という姿勢のとき、教えられる側の立場って、実は苦しいものです。自分がこの人の手をわずらわせている、と引け目を感じてしまうから。同等の立場じゃないと、人は一緒に進んでいくことができません。


 頑張ることのメリットを昔より提示しづらい時代です。今我慢していい大学に、いい会社に入れば……という考え方が昔は有効だったけど、今の若い世代には響きません。


 世の中がどう変化していくかわからないからこそ、どの人も本気で「自分の幸せ」を探すとき。「私は野菜を育てるのが幸せ」みたいに自分の幸せがある人が絶対的に強いし、そういう人のほうに説得力が宿るのだと感じます。

AERA 2023年7月10日号

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