ところが、続く2試合はノーヒット。5月17日の巨人戦(神宮)では初回にライト線へ痛烈な二塁打を放つが、2点差まで追い上げた8回裏の第3打席では無死二塁のチャンスでショートフライに倒れるなど、チームを勝利に導くことはできなかった。

 それでも、村上の入団時は巡回コーチ、現在は一軍打撃コーチとしてその“進化”を支えてきた杉村繁コーチは「彼らしい打球が増えてきたし、タイミングも合ってきている。状態は上がってますよ」と、復調の兆しは確実に見えていると言う。

 村上の今季の成績は、ここまで打率.203、6本塁打、22打点。本人は相当なストレスを感じていることだろう。思い出すのは以前、彼に日頃のストレスについて聞いた時のことだ。

「もちろんストレスはたまりますけど、僕には野球のストレスしかないので。野球でストレスがたまったら打って返すしかないと思いますし、結果を残すことでしかストレスは解消できないですから」

 返ってきたのは、そんな答えだった。実際に村上は、プロ入りからこれまでも「結果を残すこと」でストレスをことごとく解消してきた。

 3、4月はチーム防御率2.74だった投手陣が、5月に入って月間防御率5.49と苦しんでいる今、打線の援護は不可欠。カギを握るのは、やはり四番のバットだ。ヤクルトは現在、借金3でセ・リーグ5位。村上がたまりにたまったストレスをコンスタントに解消し始めたその時こそ、球団史上初のセ・リーグ3連覇に向けた燕の逆襲が始まる。(文中の今季成績は5月17日終了時点)

(文・菊田康彦)

●プロフィール
菊田康彦
1966年生まれ。静岡県出身。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身。2004~08年『スカパーMLBライブ』、16~17年『スポナビライブMLB』出演。プロ野球は10年からヤクルトの取材を続けている。