大宮:本当? 訓練が大変でしょう。

山崎:行くだけであれば、訓練は数日で大丈夫です。事前に、一度ぐらいは無重力を体験していたほうが安心なので、飛行機で体験して。

大宮:筋トレしてきてください、みたいなことを言われません?

山崎:ある程度した方が安心ですが、でも宇宙でも運動できるので大丈夫。

大宮:そんなノリで行けちゃうんですか! で、卒業後は、大学院へ?

山崎:修士まで行きました。その間に1年間休学して留学しました。

大宮:へぇ。東大側から推薦があったんですか。

山崎:それはなくて、もう自分で行きたいと思って。中学生のときに英語部に入ってアメリカの子と文通してて。ABCも習いたてで文章は長く書けなかったんですけど、いつか留学に行きたいなと思ってたんです。私が大学生のころは留学斡旋(あっせん)とかもなかったので、留学した先輩の話を聞いたり、アメリカンセンターという図書館に行って調べたり。親からもものすごく反対されていたし、自費だけだと厳しいので現地のサポートもして頂ける財団の奨学生制度を調べて応募したりして準備しました。

大宮:すごい。自分で切り開いてきた人なんですね。

山崎:新しく宇宙飛行士の候補生に選ばれた2人は、東大卒ですよね。報道で聞いていると、私の頃とは比べものにならないほど、いろんな経験をしてこられているなあと。

大宮:うんうん。でも、山崎さんみたいに自分で切り開く人もいるわけじゃない?

山崎:私は奨学生制度などに助けられたので、制度がより充実して、誰もがチャンスを切り開ける世の中になってほしいですよね。

大宮エリー(おおみや・えりー)/1975年、大阪府出身。99年、東京大学薬学部卒業。脚本家、演出家などを経て画家として活躍。クリエイティブのオンライン学校「エリー学園」「こどもエリー学園」を主宰。瀬戸内国際芸術祭(岡山県・犬島)で「光と内省のフラワーベンチ」を展示

山崎直子(やまざき・なおこ)/1970年、千葉県出身。93年、東京大学工学部航空学科卒業。96年、同大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻修士課程修了。宇宙開発事業団(現・JAXA)に入社。99年、宇宙飛行士候補者に選抜され、2010年、スペースシャトル・ディスカバリー号に搭乗

AERA 2023年5月29日号

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