もちろん実際に立候補しなくてもいい。しかし、人生で一度は「もし、自分が立候補したら」と真剣に考えてみてほしい。その経験を積むことで、選挙に対する見方がガラリと変わる。
おそらく、多くの人は実際に立候補することの難しさを痛感するはずだ。その結果、実際に立候補している人への敬意が生まれる。これまでポスターや選挙公報だけでしか知らなかった人たちの輪郭が浮かび上がる。立候補している人がいるからこそ、私たち有権者は投票で選択できるということがわかる。
今回の統一地方選挙の前半戦では、41道府県議選の定数2260人のうち、565人が無投票当選だった。後半戦の町村議選では約3割が無投票で、20の町村で定員割れとなった。有権者が選択すらできなかった選挙がいくつもある。もはや「選挙に行こう」ではなく、「選挙に出よう」と呼びかけなければならない時代になっている。
自分が選挙に出ることが無理ならば、せめて一度は候補者を自分の目で見てほしい。できれば候補者と直接話して自分の意見を伝えてほしい。民主主義が始まるのは、そこからだ。(フリーランスライター・畠山理仁)
※AERA 2023年5月29日号より抜粋