そんな、ビートルズもモータウンもディスコブームもライブエイドも知らない私にとって、洋楽との最大の出逢いは、1985年の『We Are The World』でした。スティービー・ワンダーにダイアナ・ロス。ボブ・ディランにブルース・スプリングスティーン。シンディ・ローパーにレイ・チャールズ。そしてマイケル・ジャクソンとクインシー・ジョーンズ。毎日のように観たビデオテープには、当時10歳の私が初めて目にするアメリカ音楽界のビッグネームたちが映っていました。
特に衝撃的だったのが、6番目にソロを歌ったティナ・ターナーです。その強烈な存在感と歌声に、心掴まれたのを憶えています。前年にソロ歌手として大センセーションを巻き起こしていたティナですが、そんなことは露知らず、私が初めて彼女のCDを買ったのは、『We Are The World』から4年後の89年。14歳の時でした。ようやく音楽を消費する感性が成長し、自分の意思で購入した名盤『Foreign Affair』。これが私にとって正式な「ティナとの初遭遇」です。
84年のティナ体験はありませんが、少しタイミングのズレた「にわか世代的80年代」も、今思えば悪くない気がします。今週は、ティナを偲んでタイトミニを穿こうと思います。
ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する
※この連載は6月からAERA dot.で続きます
※週刊朝日 2023年6月9日号