黒野伸一『脱・限界集落株式会社』。以前、この欄で紹介した『限界集落株式会社』の続編である。
 前作では、都会から移住した人々の活躍と「ベジタ坊」なるご当地キャラの成功で、危機から脱した幕悦町の山間部に位置する止(とどめ)村。それから4年。止村には近隣の20万人都市をあてこんだ東京資本のショッピングモールが進出し、一方、同じ幕悦町の中心部にある上元商店街はシャッター通り化いちじるしく、閑古鳥が鳴いていた。そこに降って湧いた上元地区の再開発計画。くだんの東京資本の手によって、今度はここに大型商業施設のほかに高層マンションや住民広場や公共施設を備えた「コンパクトシティ」を建設する予定という。上元の住民は賛成派と反対派に分かれ、反対派の人々はシャッター街の活性化を図るべく移住者も巻きこんで策を練るが……。
『限界集落株式会社』に関しては結局アキバ系のオタクが地域経済活性化の鍵を握るのか、ってな苦言を呈しちゃったが、続編に登場する商店街の抵抗はもうちょっと地に足がついている。活動の拠点になるのは「コトカフェ」というコミュニティカフェ。高齢者のたまり場だった喫茶店に子ども連れの母親たちが集まり、やがて託児所のような機能を持ちはじめ、地場野菜を使ったワークショップが立ち上がる。こうした地域密着型の商店街と大型ショッピングモールの生き残りをかけた戦いがこの小説の読みどころである。
 よくある構図ではあるけれど、掛け声ばかりでさっぱり内実が見えない安倍政権の「地方創生」政策を念頭に読むと、けっこう意味深。
 モールの責任者を評し、ここに根を下ろした多岐川優はいう。〈あいつはここの人間じゃない。六本木にオシャレなオフィスを構えて、夜な夜な銀座で豪遊してるんだ。幕悦には月に一、二度しか来ない。あいつにとって、この町は金儲けの道具に過ぎないんだ〉。東京の実業家も政治家も地方を見る目はだいたいこんなもん。騙されちゃダメなのよ。

週刊朝日 2015年1月23日号