どこに住み、どう働くか──。そんなことを改めて考えてみたくなる一冊だ。東京R不動産が始まったのは2003年。「改装OK」「レトロな味わい」など、少しクセがあるけれど、人によってはたまらなく魅力的かもしれない物件を集めた不動産サイトで、今や全国9都市で展開されるまでになった。
本書には、鎌倉、金沢、大阪、神戸、福岡、鹿児島、山形という各地の特徴や魅力、物件案内、移住者の実例などが凝縮されている。
築100年超の町家を金沢R不動産で見つけた女性は、「家と人は縁だ」と会社を辞めて移住。2年かけて改装し、雑貨とカフェの店を営む。
また、家族3人で神戸の外国人向けマンションに転居し、東京と神戸の二拠点で仕事をする男性は、「移動することが一番の気分転換になるのでむしろありがたい」と語る。
しかし、地方暮らしには予想通りにいかないこともある。本書に出てくる移住者も、決して“成功者”ではなく、試行錯誤の過程にある。ローカルに住み、働くことが何なのかはなかなか分からない。でも、分からないところに面白さが宿っているのだ。
※週刊朝日 2015年1月16日号