ぜ~んぶ見た! ふふん鼻の穴ひろげて自慢じゃい(^o^) (撮影/谷川賢作)
ぜ~んぶ見た! ふふん鼻の穴ひろげて自慢じゃい(^o^) (撮影/谷川賢作)
この記事の写真をすべて見る
(撮影/谷川賢作)
(撮影/谷川賢作)

 こどもの頃からコンサートホール、野球場、映画館、とにかく収容人員の大きなハコに行くのが好きだった。チケットをもぎってもらい階段をトットットッと上がって、いきなり視界に会場の全貌が広がる時のあの昂揚感!

「うおぁっ 始まる前から武者震いだぜい」

 当夜の演し物への期待感は、とにかく容れものが大きければ大きいほどあがっていくのだ。初めて行った武道館、後楽園球場、テアトル東京。実際になにを見たかなどは意外と忘れているのだが、あの視界に広がったパノラマと、人々のざわめきと、とりすました場内アナウンス、どれもが私の細胞の一部を形作っているに違いない。

 それで今現在の映画館にかぎって言うと、いつの間にか主流になってふんぞりかえっているシネコンのあの妙に人を寄せ付けないとりすました感ってなんなんだろう? 扉あけて入って短い回廊をキュッとまがって、きれいで整然とした客席を見あげてもぜんぜんワクワクしない。無駄な反射音をおさえるためか、高級感を演出しているのか、あの毛足の短い絨毯もだめだ。妙に空気がシンとしてしまうし、そんな中で常に薄く鳴ってるエンドレスのBGMも不快でしかたない。すでに当たり前の禁煙から始まり、おしゃべりするなとか、前の席を蹴るな、始まる前に一々説教たれるのもやめにしてけれ、バカにしとんのか! あいや、ちと脱線(^_^; 悪口でなく、ほめちぎほめちぎ、と。そこ忘れずに。

 で、ついに新宿地区最後の「巨大艦」新宿ミラノ座も58年の歴史を大晦日で終わらせてしまう。なんとも残念だ。思いおこせばずっと阿佐ヶ谷在住の私は新宿地区の「新宿プラザ」新宿ピカデリー」「新宿ミラノ」の3つの大型館には小学生の頃からどれだけ通ったことだろう。『エクソシスト』『燃えよドラゴン』『ダーティーハリー』『ポセイドンアドベンチャー』『ゴッドファーザー』etc。まだまだ無尽蔵にいっぱいでてきますが、上記の3館のいずれかで仲間達とワイワイ見ていたのを思いだす。そんでクラスでヌンチャク振り回したり、モデルガン片手に追っかけっこしたりして、気の強い女子にビシッと怒られていました。男っていつもバカ(^_^; ですが、とにかく映画館に行くということが今よりはるかに日常だった70年代はじめ。TVスポットなんかまだそんなになかったし、「スクリーン」「ロードショー」誌のあおりの記事やらで妄想をめいっぱいふくらませて、その頂点で見て想像以上に血湧き肉躍ったこともあり、肩すかしでガッカリだったこともあるし、ああ、今となってはいい思い出だなあ。ため息。

 さて、ミラノ座に別れを告げに、行ってきました。『インターステラー』この大映画館で最後に観るにふさわしい入魂の迷作!?(またそういうこと言う(^_^; けど、相対性理論も五次元もようわからんのだもの。こっちの時間とあっちの時間がすすみ方が違うので、あっちで作業してたとえ数時間で戻っても、こっちでは何年もたっていると言われてもなんだかどうなのよ、それって……)

 すべてがけむにまかれたような話しを夢遊病のように見ていたのだけど、最後にはわけもわからず感動して涙してしまったのは、ネタばらしなのでツボのシーンは言えませんが、映画のテーマが「人生における時間の経過」だということと、半世紀くらいこのバレーボールコート大のおっきなスクリーンで胸をときめかせていたのに、もうこれで終わりなのか、というさみしさも手伝っていたように思う。

 ミラノ座~~(叫)心からありがと~~! 今の私を作ってくれた君のことはずっとずっと忘れない。

 大晦日の日まで閉館イベントをやっています。皆様もぜひ、さようならを言いに行ってください。これで1000席を越える映画館は日本からなくなりました。[次回1/13(火)更新予定]

【朝日新聞デジタル】さらば、青春のミラノ座 31日閉館、さよなら興行開始
http://www.asahi.com/articles/ASGDN5DW9GDNUTIL010.html