大好きな作家が共作するなんて、まるで夢のようだ。阿部和重と伊坂幸太郎による『キャプテンサンダーボルト』には、発売前の広告を見たときから興奮させられた。
発売と同時に購入して(旅先だったので電子書籍版をダウンロード)、一気に読む。期待を超えるおもしろさだ。阿部のB級アクション映画みたいなスピード感と、伊坂のユーモラスでしゃれた感じがミックスされている。そして根底には両者が共に持つ温かさと倫理観が。素晴らしい体験だ。
主な舞台は2013年夏の東北地方、山形市と仙台市、そして蔵王である。そう、阿部の出身地であり「神町サーガ」の舞台である山形県。伊坂が暮らし、ほとんどの作品の舞台となっている宮城県仙台市。そして山形県と宮城県の県境にある蔵王連峰。
「アタッシェケースを持った男が現れたらこれを渡してくれ」
チューインガムの包装紙に書いた部屋番号のメモ。それが同じようなメモと取り違えられたところから事件が始まる。
借金取りに追われ、破滅寸前の男が二人、事件に巻き込まれていく。二人は幼なじみで元野球少年、そして戦隊ヒーローもののドラマ『鳴神戦隊サンダーボルト』のファンだった。そこに色っぽい美女が加わる。
第二次世界大戦末期、蔵王に墜落したB29の謎。蔵王の御釜(五色沼)で発生するという致死率の高い病原菌の謎。日本語を解さない銀髪の怪人。そして、映画版『鳴神戦隊サンダーボルト』公開中止事件をめぐる謎。三人の前に次々と謎があらわれる。まるでジグソーパズルのピースが箱から投げ出されたように。翻弄され、追い詰められる三人。手に汗握る展開。そして最後の最後、すべてが収まる快感。
あるときは『ゴールデンスランバー』のように、またあるときは『ピストルズ』のように。二人の作家の持ち味が互いを引き立てる傑作だ。
※週刊朝日 2014年12月19日号
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