真実に肉薄する情報は誰もが欲しがるが、安くない。限られた一部の人間だけが手にすることが出来る。
 総会屋や経済ヤクザがバブルの臭いを嗅ぎ付けてきた1980年代半ば。捜査当局や大手マスコミはグレーゾーンの生息者の登場に戸惑った。この時、裏社会の水先案内人となったのが情報誌「現代産業情報」の発行人であった石原俊介だ。中学卒業後、職を転々として暴力団とのパイプもあった石原は表と裏の情報交差点に立つことで、当代一の情報屋の階段を駆け上がる。リクルート事件、イトマン事件、総会屋利益供与事件などバブル関連の経済事件の報道の端緒は大半が「現代産業情報」だった。
 事件の筋を読む眼力と裏社会の人脈が石原の生命線だった。企業が反社会的勢力との関係遮断を打ち出すことで、影響力は低下し、インターネットの登場がダメ押しになる。とはいえ、情報が金にならない時代になったわけではない。玉石混淆の情報時代だからこそ、権力者の喉元を突くような情報の意味を本書は投げかけてくる。

週刊朝日 2014年12月26日号