AERA 2023年3月27日号より

 東京都立荏原病院耳鼻咽喉科の木村百合香医長はこう話す。

「初めての花粉症なら、薬にもいろいろ種類がありますから、一度に大量処方してもらわず、服用し、効き目が弱い、または副作用が強いと感じたら、薬を変えてもらうようにしてください。Aさんには眠気が少なくよく効く薬でも、Bさんには眠気が強く出るケースもあります」

 市販薬ではダメなのか。

「いま耳鼻咽喉科は混んでいますからね。時間がなければ“つなぎ”として市販薬を利用するのも手でしょう。しかしやはり、耳鼻咽喉科の受診をお勧めします」(木村医長)

■症状ごとに効く薬違う

 その理由としてまずは本当に花粉症なのか確認できること。花粉症の疑いが濃厚でも、それは素人判断。また、花粉症の薬はシーズン中毎日飲むことが症状コントロールの上で望ましいが、市販薬を月単位で購入すると高くつく。さらに処方薬でしか手に入らない薬もある。

「最初の発症時に耳鼻咽喉科で検査を受け、どの花粉にアレルギー反応が出るのか、どの薬が自分の症状に合っているのかを知っておけば、来シーズンからの対策を立てやすくなります」(同)

 スギかヒノキか両方か。ほかの花粉にも反応するのか。同じ花粉症でも、人によって薬を飲み始める時期、飲み続ける期間が異なる。対策を立てるには耳鼻咽喉科での検査が必要なのだ。

「薬を飲んでも効かない」「眠くなって仕方ない」──。こんな話を聞いた花粉症デビューの人もいるのでは? 前出の大久保教授によれば、薬が効かないのは、選び方に問題があるという。

「最もつらい症状は人それぞれ違う。薬は種類ごとに得意とする症状があり、患者さんに応じたものを選ばなくてはなりません」(大久保教授)

 一例を挙げよう。「くしゃみや鼻水がひどい」といった場合で、症状が軽症なら第2世代抗ヒスタミン薬。「第1世代」よりも眠気が少ない。「軽症とはいえない」ようなら、「鼻噴霧用ステロイド薬」を追加。

「鼻づまりがひどい」という人には「第2世代抗ヒスタミン薬+鼻噴霧用ステロイド薬+抗ロイコトリエン拮抗(きっこう)薬」、もしくは「第2世代抗ヒスタミン薬・血管収縮薬配合剤+鼻噴霧用ステロイド薬」。「鼻づまりがひどすぎて眠れない」という訴えには、必要に応じて点鼻用血管収縮薬を1~2週間に限って処方する。

 目のかゆみには、点眼薬を使用する。

「薬によっては、効果が表れるまで数日から数週間かかるものもあります。患者さんの症状、来院のタイミングを見て、何からいくか、どう組み合わせるかなど、探っていきます」(大久保教授)

(ライター・羽根田真智)

AERA 2023年3月27日号より抜粋

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