安倍首相は、消費増税の延期の是非を国民に問うため、衆議院を解散し総選挙を行うことを決めました。12月14日投開票の、今回の衆院選。注目の、各党のマニフェストですが、共産党が発表した公約は「安倍政権の暴走ストップ」。経済政策の軸足を「暮らし第一」に移すと明記し、消費税増税の中止などを公約に盛り込んでいます。



 消費増税を延期すべきか否か。そもそも増税は自体が間違いなのか。各党の消費税に対する姿勢だけでなく、一般消費者にとっても賛否両論あるこの問題。一方、高福祉国家として知られる北欧諸国では日本よりもはるかに高い消費税率が課せられていることは、よく知られた話です。



 世界で最も消費税率が高い国・アイスランドは、日本の約3倍となる25.5%。続いて、スウェーデン、デンマークなどが25%、ギリシャ、フィンランドで23%など、日本では考えられないほどに高い消費税率となっています。またお隣の中国は17%で、韓国は10%と、これもまた日本よりも厳しい消費税率です(なお、アイルランドの食料品の消費税は0%。デンマークでは一律25%ですが、医療費、教育、年金などが無料)。



 書籍『僕らはまだ、世界を1ミリも知らない』は、株式会社スクールウィズ代表取締役兼CEOで、フィリピン留学の仕掛け人と称される太田英基さん(29歳)の著書。2年50か国、1000人以上のビジネスマンと出逢ってきた企業家の世界一周の記録となっています。その中で紹介されている、スウェーデンの日常を覗いてみましょう。



 太田さんが実際にストックホルムを歩いていると、スウェーデンならではの良さを感じたそうです。日本もスウェーデンも充実した福利厚生を兼ね揃えている国であることには間違いなく、万が一の時の支援の厚さは両国とも似ています。しかし、スウェーデンには、「万が一以外の日常の中にも福祉がふんだんに織り込まれている」と太田さんは言います。



 たとえば、子育てをしている母親への支援。スウェーデンでは、ベビーカーを押す母親は市営バスなどを無料で利用できる他、出産費用は無料、育児休業制度も整っており、子どもが8歳になるまでの間に480日間の休暇を取得できるそうです。医療費も20歳未満は無料であり、それ以上の人も、年間の自己負担は上限900クローナ(日本円で約1万円ほど)しかかかりません。



 こうした医療・福祉の財源となっている消費税も、対象は一律ではなく、食費や教育に関する文房具などは税率が低く、電化製品やゲームなどは高めに設定されています。



「日本だと、高い税金を払っても『万が一』以外の日常の大部分では福祉を感じることが難しい。でも、ここスウェーデンはその見せ方がうまい。自分たちが支払った税金がちゃんと国民のために還元されていることが非常にわかりやすい制度がつくられていると思った」(同書より)



 太田さんはスウェーデンの日常を目の当たりにした結果、こうした考えに至ったといいます。確かに、日常の中での「福祉の見える化」は良いかもしれません。自分たちが納めたお金がどう使われているのかがはっきりわかれば、一般生活者の消費税に対する考え方が、少しは変わるのではないでしょうか。