生活保護の申請が通ったのは、「私なんかでも、生きていていいんだ……」と心に染み渡る贈り物だったと著者は書く。
正社員経験もある30代後半の女性が、両親との葛藤、体調不良、会社の倒産、約100社に連続不採用、大家によるアパート退去通告を経て、生活保護受給に至る自身の体験を綴る。ちょっとしたタイミングで、するりと就労から滑り落ち、戻れない。それが社会の動きと連動していることも示される。
電話が止まり、連絡が取れないからと、行政の担当者が駆けつけてきて、初めて自身の行き詰まりに気付く。担当者との間に信頼が生まれ、安心を得るまでの心の震え、気付き、勇気、周囲の対応が、軽妙に語られる。親きょうだいからDVや虐待を受けていれば、扶養照会(親族への支援の可否の問い合わせ)はしない等、知られていない情報も。女性にとっての生活保護制度を丁寧に説明した本は稀だ。
当事者には自殺、風俗、借金とは違う生き延び方があることを伝え、支援者には、外からうかがい知れない当事者の心の揺れを教える。
※週刊朝日 2014年11月28日号