太川陽介+蛭子能収の名コンビにマドンナと呼ばれる女性タレントが加わってのガチンコ旅。『ルイルイ仕切り術』は「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」(テレビ東京)で、そのリーダーぶりをいかんなく発揮している太川陽介の初の著作だ。
〈「蛭子さん! 台風が来たらこれは本当にピンチだよ」/そういったボクに蛭子さん、一体なんていったと思います。/「あっ、そ」/その一言ですよ。(略)/「ほら、台風が来たらバスが止まっちゃうかもしれないよ」/そうしたら蛭子さん、/「あ、そうね」/ですって。これにはさすがにカチンときましたね〉
 で、太川陽介はどうしたか。
〈この時ばかりはボクも蛭子さんにアドバイスしましたね。/「ああいう時は、ちゃんと番組のことを考えてノッてこないとダメですよ」/って〉。ここで「年上の人に注意する時は裏で2人だけで」という教訓が入るのだが〈ただ、ボクの場合は相手が蛭子さんですからね、大事な話と気付いたかどうか〉。
 蛭子さんといえば、どこへ行ってもトンカツ、カレー、オムライス。その姿勢を評価して〈ブレない姿勢は失敗することがない〉という教訓を引き出しつつも、こういう態度は〈蛭子さん以外になかなかできる芸当ではないんですけど〉。
 副題は「人生も会社も路線バスの旅も成功に導く40のツボ」。「蛭子さん級」の怪獣をどう調教するかを前面に出し、ハウツー本の体裁にむりやり落とし込もうとはしているものの、優等生は怪獣に結局はかなわないというのが全体の印象。
 もっとも太川陽介は苦労人である。10代でデビューし、NHK「レッツゴーヤング」の司会で人気を博すも、ピタッと仕事がなくなった20代後半。「50歳をすぎても好青年」な彼のイメージは、旅番組の前には洋服をすべて新調するという律儀さによるのかも。ちなみに推薦文を兼ねた蛭子能収の太川評は「もしかしたら子供なんじゃないか?と思うときもある」。あんたがいうな、だよな。
週刊朝日 2014年10月3日号

[AERA最新号はこちら]