本書は新聞の定番コーナー「人生相談」を舞台にした小説だ。物語は大洋新聞の長寿連載「よろず相談室」に寄せられた、「居候している女性が出て行かない」という投書から始まる。他にも「職場のお客が苦手」「隣の人がうるさい」「口座からお金を勝手に引き出された」など、様々な投書が寄せられる。
 一見バラバラな悩みだが、ある悩みの被害者が、実は別の人を悩ます当事者だったりと、一癖も二癖もある登場人物たちはどこかで繋がっている。
 だから、「この人は誰だっけ?」と何度もページをめくり返すことになる。
 終盤、パズルのピースがぱたぱたと埋まるように物語のスピードが加速し、1枚の絵が完成する。しかし、その絵柄が本当に正しいか確信が持てず、またもやページを繰り直す。
 人生相談のアドバイス通りに解決すれば苦労はしない。それでも人は、明確な回答や真実を欲さずにはいられない。登場人物もまた、それを求めて迷走する。一方、高みの見物であるはずの読み手も、他人の不幸を覗き見たいという、野次馬的な好奇心が浮き彫りにされてしまうのだ。

週刊朝日 2014年9月5日号

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