ピカソの「ゲルニカ」も、至るところが未完のままだったり、描きそんじたり、消し忘れたりしている。そのためにあの絵ができるまでのピカソの迷いを垣間見ることができるから、見ていて飽きないのである。それにしても人はどうして完成したものに憧れるのだろう。自分が未完だから完成品に憧れるのではないだろうか。そんな完成品だってどれもこれも幻想だと思うけどね。

横尾忠則(よこお・ただのり)/1936年、兵庫県西脇市生まれ。ニューヨーク近代美術館をはじめ国内外の美術館で個展開催。小説『ぶるうらんど』で泉鏡花文学賞。2011年度朝日賞。15年世界文化賞。20年東京都名誉都民顕彰

週刊朝日  2023年3月24日号

暮らしとモノ班 for promotion
大谷翔平選手の好感度の高さに企業もメロメロ!どんな企業と契約している?