作家・画家の大宮エリーさんの連載「東大ふたり同窓会」。東大卒を隠して生きてきたという大宮さんが、同窓生と語り合い、東大ってなんぼのもんかと考えます。今回は出雲充さんにスーパー微生物ちゃんであるユーグレナの培養成功に至ったストーリーを聞きました。
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大宮:東大時代、部活とかは?
出雲:部活はほとんどやってないです。勉強もしてないですね。
大宮:じゃあ、何してたんですか。
出雲:バングラデシュから帰ってきてからは、どういう栄養素があるのかなって調べてました。
大宮:えー、ちゃんと研究されてたんですね。出雲さんが大学生の頃だと20年前ぐらいですよね。その頃ユーグレナ(ミドリムシ)は注目されてたんですか。
出雲:農芸化学界隈ではユーグレナが持つ豊富な栄養素は有名で、スーパーヒーローの素質があることは知られていました。
大宮:へー!
出雲:ただ、社会実装する際に不可欠な大量培養が世界中のどこでも確立されていなくて、ユーグレナの大量培養は夢物語になっていたんです。
大宮:卒業後は1回企業に就職されてますよね?
出雲:銀行に入りました。ユーグレナをデビューさせたいけど、そのためにまずはお金について知りたくて。
大宮:そうだったんですね。
出雲:銀行で経験を積んで、35歳ぐらいに起業できたらなと思って、日中は銀行、夜と休日はユーグレナの研究に没頭していたのですが、このままでは起業は先延ばしになってしまうと、ちょうど1年で辞めました。
大宮:全てはユーグレナのために。
出雲:当時、ユーグレナの研究は日本中でやってたんです。学会はあるんですけど、学会はうまくいった話を共有する場で、失敗した話は誰とも共有できていないんですよ。
大宮:たしかに。
出雲:で、私は若かったし、時間もあったので、夜行バスで日本中の先生のところに行って、なぜ世界中の誰も培養できないんですかって聞いて回ったんですよ。それで、ほとんどの方が、同じところで、同じ失敗をしていたことがわかったんですよ。
大宮:同じ失敗とは?
出雲:ユーグレナは栄養満点ですから、ばい菌も雑菌も虫も鳥も食べてしまう。じゃあ天敵が入らないよう無菌状態にしようとするけど難しい。