大宮:なるほど。雑菌がどうしても入ってしまう失敗ですね。無菌状態で培養は大量には不可能ですもんね。
出雲:はい。だったら、無菌状態にするんじゃなくて、ユーグレナを育てる培養液を変えてみようと。
大宮:培地を変えるんだ?!
出雲:ユーグレナにとっては居心地がいいけど、その他の生物が嫌がる培養液にしたら、ユーグレナが食べられないんじゃないかと。
大宮:そんな夢みたいな培地を見つけたんですね! それはどんな?
出雲:ユーグレナは酸性に比較的強いんです。太古の酸素の少ない環境でも生きてきた生物ですから。
大宮:そこに着目したんですね。で、いまバイオ燃料も作っているそうな。
出雲:はい。先日、岸田総理が乗った政府専用機にも当社のバイオ燃料「サステオ」を給油いただきました。
大宮:へえ、すごい。
出雲:まだ量を作れないんですけど、エネルギー資源の少ない日本でカーボンニュートラルの実現に貢献でき得るバイオ燃料をバンバン使えるようになったらいいですよね。栄養失調の問題も地球温暖化の問題も、ユーグレナで解決できそうって状態を見てからじゃないと死ねないです。
大宮:出雲さんの原点であり今も支援されてるバングラデシュに出雲さんの銅像ができるんじゃないですか。
出雲:銅像を建てるんだったら、ユーグレナですよ。
大宮:プランクトンの銅像は、すごい(笑)。
大宮エリー(おおみや・えりー)/1975年、大阪府出身。99年、東京大学薬学部卒業。脚本家、演出家などを経て画家として活躍。クリエイティブのオンライン学校「エリー学園」「こどもエリー学園」を主宰。瀬戸内国際芸術祭(岡山県・犬島)で「光と内省のフラワーベンチ」を展示
出雲充(いずも・みつる)/1980年、広島県出身。2002年に東京大学農学部卒業、東京三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行。05年、ユーグレナを立ち上げ、代表取締役社長に。同年、世界初の微細藻類ユーグレナの食用屋外大量培養に成功。著書に『僕はミドリムシで世界を救うことに決めた。』など
※AERA 2023年3月20日号