ただ、SNSと対面でのコミュニケーションの使い分けは、若い世代のほうが巧みだと感じるという。

「他人のキラキラを見せつけられて内心は鬱陶しいと感じても、SNSってそういう場だからと割り切って、それを対面の人間関係には持ち込みません。若者にとってSNSは、対面でのコミュニケーションのわずらわしさを排除できるところに居心地の良さを感じているので、かえって面倒になりそうなことはしない。面倒臭い人だと思われるのも嫌だし、自分も面倒臭いからです」(正木教授)

■揺れる善悪の基準

 問題は回転ずしチェーンの迷惑行為のような「悪目立ち」するタイプの投稿だ。

「プラスの評価を得るための投稿は世の中にあふれているため競争率が高い半面、悪目立ちする投稿は少ない分、競争率が低いので目につきやすく、精神的な抵抗さえ乗り越えれば雪だるま式に拡散される傾向があります」(同)

 ネット上の残虐な動画に触発されて犯罪に及ぶケースも実際おきている。倫理的にこれは許されない、という投稿ルールを今よりも厳密に規定できないものなのか。正木教授は言う。

「善悪の基準はSNS上の反応で自然淘汰的に決まります。白黒はっきりするのか、拮抗して分断の形になるのか、このラインは絶えず揺れ動いています。従来の常識的な価値観を軽く凌駕するような潮流がSNSを使いこなす人たちによって日々更新され続けているため、私たちが言えるのは『現状はこうです』という説明にしかなりません。つまり、常に後追いの形になってしまうのです」

(編集部・渡辺豪)

AERA 2023年3月20日号

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